この風刺画はノルウェーやフランス、イギリスのメディアでも転載されたりニュースで放映され、騒ぎが悪化し、欧州だけではなく中東やアジアでも暴動やデンマーク大使館の放火、不買運動などが起こります。

2015年には預言者ムハンマドのフランスの風刺週刊紙シャルリー・エブドのオフィスが襲撃され警官を含む12名が殺害、負傷者11名という大事件が発生します。

事件後にフランスだけではなく欧州各地で表現の自由に関する議論や抗議運動が起こります。

シャルリー・エブドはこの事件後も、ムハマンドやイスラム教を風刺するイラストを掲載したり、ムハマンドの登場する漫画を発売したりしました。

シャルリー・エブドの風刺は行き過ぎと非難されることもありますが、フランスでは裁判になってもほとんどの場合勝訴しています。

2021年3月には、イギリスの北部ヨークシャーにあるバタリーグラマースクールという高校では、宗教の授業で、シャルリー・エブドの事件の顛末と風刺画を引用した教員がイスラム教の保護者や地域の人より抗議され、デモに発展してしまいます。

この教師は学校により停職になり、パートナーや子供とともに身を隠して暮らさなければならなくなった上に、新たなアイデンティティまで与えられます。

イギリス政府はこの授業の内容には全く問題がないとして、抗議をした保護者や地域の人々を強く非難しました。その後調査によって教師の授業には問題がなかったとされ、停職は解かれましたが、彼は家に戻ることもできず、職場に復帰することはできませんでした。

別の町で、全く異なる人物として生きていかねばならなくなったのです。

イギリスの世論は教員に同情的で、表現の自由を守るべきだという意見が大半を占めました。

参照:ウェストヨークシャーの学校で授業中に預言者ムハンマドの漫画を生徒たちに見せて停職になった教師 デイリーメール

このように表現の自由を重視する欧州においては、 ムハマンドの風刺画を巡る事件が 大きな議論になっているのです。

特に 欧州北部においては 宗教や社会的な事柄、政治、人種に関することなどをブラックな笑いで 風刺をすることが伝統になっています。日本の感覚だとぎょっとするような強烈な風刺がテレビで流れ、新聞や雑誌もそのような笑いに溢れています。特にオランダは このような風刺を得意とする国です。風刺によって物事の本質をあぶり出し 議論につなげるというのは民主主義における非常に重要な役割だと考えられているのです。

ところが イスラム教では こういった欧州の風刺の感覚が通用しないので、放送局、出版社、映画会社、作家、お笑い芸人、学者、教員などが自主規制をするようになってしまっています。これは民主主義社会における健全ではないことであるとしてオランダ自由党はこの状況を非難をしているのです。

ウィルダース氏は自身のX(旧Twitter)において、預言者ムハンマドの風刺画を掲げ、オランダのすべてのメディアと学校にこの様な風刺画を掲載すると述べているのです。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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