同教授はまた、「ウクライナ側が現在最も必要としているのは対空防衛システムのパトリオットミサイルだ。ゼレンスキー大統領はパトリオット型対空防衛システム25台を必要だと訴えてきたが、ここにきて最低限でも7台が必要だと言い出している。ウクライナ側の強い要請を受けで、ドイツから3台、米国から1台がウクライナに供与された。パトリオット対空防衛システムはキーウに集中している。例えば、ギリシャは多くのパトリオット対空防衛システムを保有しているが、ウクライナへの提供を拒んでいる。ギリシャの対空防衛システムは隣国トルコの攻撃を想定しているから、自国の防衛上、それをウクライナに供与できないからだ」という。ちなみに、ギリシャとトルコ両国はNATO加盟国だが、領土資源問題で対立している(「東地中海の天然ガス田争奪戦の行方」2020年9月9日参考)。

ロシア軍は米国の軍事支援が届く前にウクライナへの攻撃を激化させている。米国の戦争研究所(ISW)のシンクタンクは、「ウクライナが米国の支援が前線に到着するのを待っている間、ロシアは今後数週間で明らかな戦術的利益を得るだろう」と分析している。実際、ロシア国防省は28日、ドネツク地域の小さな町、ノヴォバフムティウカを占領したと述べている。

なお、ゼレンスキー大統領は28日、アメリカとの二国間の安全保障協定を締結するために具体的な文書を作成中だ。目標は、「全ての安全保障協定の中で最も強力なものにすることだ」と述べている。キーウ政府は過去、複数の欧州諸国と同様の安全保障協定を結んでいる。

ウクライナに軍事支援する欧米には統一した戦略的コンセプトがない。バルト3国、ポーランド、英国、ルーマニアなどの国は、クリミア半島を含み、ロシア軍をウクライナの国境外に追い払うまで戦争を遂行すべきだと主張し、積極的な軍事支援を支持している。一方、欧州の盟主ドイツは戦闘のエスカレートを警戒し、ロシア軍から全領土を解放するまで戦争を推進するという考えには消極的だ、といった具合だ。

いずれにしても、ウクライナは米国からの軍事支援が届くまで領土を死守する一方、ロシアは可能な限り新たな領土を奪うために軍の攻勢を掛けてくるだろう。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年4月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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