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日本の北方に、ロシアの「核要塞」が広がっている――。

人知れず極東で進められているロシアの核戦略を、超人気軍事研究家がロシア軍内部資料と衛星画像インテリジェンスから明らかにする。/さらにウクライナ戦争と極東ロシア軍との関わり、日本のあるべき対ロ安全保障政策についても解説。

版元(朝日新書)がこう宣伝する、小泉悠准教授(東京大学)の最新刊『オホーツク核要塞 歴史と衛星画像で読み解くロシアの極東軍事戦略』が発売された。今回も、前回と同じ理由により、同新書を紹介したい。

なぜ、いま「オホーツク核要塞」なのか。同書は「はじめに」、「地政学の時代におけるオホーツク海」と題して、こう述べる。

現代のSSBM(弾道ミサイル搭載原子力潜水艦・潮注)が搭載する潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)は原則的に全て核弾頭搭載型であり、しかも多くは複数個別再投入体(MIRV)化されている。つまり、1発のSLBMには複数の核弾頭が搭載されているわけであるから、たった1隻でもSSBNが生き残れば、100カ所内外のターゲットに対して広島・長崎型原爆の10倍にも及ぶ威力の核弾頭で報復を行うことが可能だ。いうなれば、日本の北側はロシアの核抑止力を支える拠点であるわけで、隣国ロシアとの関係を考える上でも北方領土問題を理解する上でも、こうした軍事的視点は欠くべからざるものと言える。

そのうえで、「以上のような話は、国際関係や安全保障に関心を持つ読者にとって、半ば常識であろう」と続けながら、「では、その実態を、我々はどれだけ知っているだろうか」と問いかける。