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常識こそが保守主義の根底を支えている重要な一部分なのだ。

世の中に「保守」を売り物にする政治家や言論人は数多いるが、保守主義の根源にまで立ち戻り、突き詰めて考えている人は驚くほど少ない。本書の一文を読み、改めてその想いを強くした。Xやユーチューブなどで溢れる標的への憎悪を煽るような品のない言説を見るたびに、保守を名乗る人物たちの常識を疑わざるを得ないからだ。

本書「興国と亡国―保守主義とリベラリズム(かや書房)」は著者がこれまでに月刊誌などで発表した論文や書下ろしを纏めた論考集である。テーマは政治評論から2021年東京オリンピック開催反対への著者からの反論など多岐に渡る。

その中でも著者の無念と憤りが伝わってくるのが、故・安倍晋三元総理が暗殺された直後の追悼記である。自民党の中で良質な保守を代表する政治家が居なくなったことを嘆き、安倍氏を失った後の自民党が劣化し続けて「庶民を愚弄する売国政党」になり果てたと警鐘を鳴らすのである。