日米両国の経済戦に対する対応の相違

米国が様々なデータを分析して得た結論は、「経済制裁は、日本の国民経済を疲弊させ、産業を支えることもできず、次第に深刻な経済的危機に陥る」ということだった。米国は日本の脆弱性について、非常に細かく丹念に調査し、極めて合理的で効果的な経済制裁を実行していった。

一方、経済力に劣る日本は、研究機関の議論において、対米戦は日本必敗の結論が出ていたにもかかわらず、当時の為政者たちや軍部に理解されず、かつ楽観的な見方が支配して、対米戦に突き進んでいった。

どんなに優秀な人々が議論を尽くしたとしても、為政者が先見の明を持ち、冷静な分析力と大局観を以て、広い視野で将来を見据えていかなければ国は誤まるという典型的な例である。

【参考】 エドワード・ミラー、金子宣子訳「日本経済を殲滅せよ」新潮社、2010年 牧野邦昭「経済学者たちの日米開戦」新潮選書、2018年

藤谷 昌敏 1954(昭和29)年、北海道生まれ。学習院大学法学部法学科、北陸先端科学技術大学院大学先端科学技術研究科修士課程卒、知識科学修士、MOT。法務省公安調査庁入庁(北朝鮮、中国、ロシア、国際テロ、サイバーテロ部門歴任)。同庁金沢公安調査事務所長で退官。現在、JFSS政策提言委員、経済安全保障マネジメント支援機構上席研究員、合同会社OFFICE TOYA代表、TOYA未来情報研究所代表、金沢工業大学客員教授(危機管理論)。主要著書(共著)に『第3世代のサービスイノベーション』(社会評論社)、論文に「我が国に対するインテリジェンス活動にどう対応するのか」(本誌『季報』Vol.78-83に連載)がある。

編集部より:この記事は一般社団法人 日本戦略研究フォーラム 2023年12月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は 日本戦略研究フォーラム公式サイトをご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?