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先週、アップルがEV開発を中止するというニュースが世界中を駆け巡りました。EVに関してはベンツも「30年EV専業化」戦略を転換するようです。国レベルでも2023年9月に英スナク首相がEV化を5年遅らせると発表しました。

メガソーラーについては数年前から環境破壊や災害リスクを巡って全国各地で住民と事業者のトラブルが起きており、メガソーラー不要という宣言や森林伐採を伴う再エネに課税する自治体も現れました。

退潮著しいESG投資関連では、たとえばゴールドマン・サックスが「パリ協定」気候ETFを閉鎖し、S&PがESG評価の公表をやめました。

つい先日も、JPモルガン・アセット・マネジメント、ブラックロック、ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの大手3社がクライメート・アクション100+という世界最大の気候変動投資家グループから離脱したという報道を目にしました。

事程左様に、近年脱炭素やESGが大きな曲がり角を迎えていることは明白です。企業でも国でも自治体でも、状況が変わればいち早く方向転換を決断しなければなりません。

他方、筆者は2023年1月の国際環境経済研究所への寄稿で次の提言を行いました。2022年11月に開催されたCOP27において、クレジット利用によるカーボンオフセットや企業の曖昧なカーボンニュートラル宣言に対する非難が厳しくなると予想したためです。

もしも、日本政府の46%削減を前提としていたり、クレジットの購入を折り込んでいたり、そもそも削減計画に白地があるなど「気合い」の脱炭素宣言である場合は、一旦宣言を取り下げゼロから見直してはいかがでしょうか。その上で、2030年や2050年にこだわらず自助努力による目途が付いた時点で改めて宣言をし直す方が、より誠実な企業経営と言えます。ESGやSDGsを掲げる廉潔な組織であれば、外部から指摘を受ける前に自浄作用が働くはずです。COP27で潮目が変わったことを企業は認識すべきと考えます。

その後、2023年10月のアゴラ記事では2026年以降カーボンオフセットを伴うカーボンニュートラル表示ができなくなることも指摘しました。

2026年からクレジット利用にもとづくカーボンニュートラル主張が禁止されるのに、日本では2023年の改正省エネ法で国がクレジット利用を推奨し、2023年10月11日にカーボンクレジット市場が開設され、2025年からは東京都が中小事業者にも脱炭素条例を拡大しようとしています。クレジット利用を急拡大させた後、2026年以降に「カーボンニュートラル」という表現が使えなくなったら産業界は大混乱に陥ります。

アップルのEV開発には数十億ドルが投じられてきましたが、状況の変化に応じて大胆に戦略を転換しました。ゴールドマン・サックスやブラックロックも同様です。日本企業もESGの終焉やグリーンウォッシングの取り締まり強化などの状況変化を受けてカーボンニュートラル宣言を取り下げる時期に来ているのではないでしょうか。