商業ビルは、完成して賃貸に供されたとき、賃料を生み始めると同時に、劣化を開始する。仮に、耐用年数を50年として均等に減価償却させ、その間の賃料収入と管理費用の変動がなく、修繕費等の追加的資本支出を無視し、50年後の除却費用が底地の売却代金で概ね相殺されるとすれば、毎年の賃料収入から減価償却費と管理費用を差し引いた金額は50年間一定となる。
つまり、商業ビルへの投資とは、耐用年数の期間にわたって、初期投資額を均等に回収することであり、いわば年金なのである。いうまでもなく、実際には、修繕費等の発生があり、また賃料や管理費用の変動があるから、完全な均等回収とはならないが、不動産投資が構造的に年金型であることに変わりない。そして、不動産投資に限らず、発電所、船舶や航空機等の輸送用機器などを対象とした実物資産投資と呼ばれる領域では、投資対象に耐用年数がある以上は、必ず年金型の投資になる。

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