第1前段階では、審査に必要な医学的情報が十分かどうかがチェックされます。医学的情報が不十分な事例はこの段階で除外されます。つまり、そのような事例は原則的に認定されません。ただし、突然死などのように政治的配慮より認定される場合はあります。

第2段階では、A1、A4、A5の3項目が審査されていると私は考えます。A4は厚労省の解説の「症状の発生が医学的な合理性を有すること」に相当し、A5は「他の原因によるものと考える合理性がないこと」に相当します。

ただし、以前の論考で指摘しましたが、接種後死亡では突然死が多数認定されています。実質的に原因不明の死亡が救済認定されているわけですから、A4は必ずしも考慮されていないことになります。したがって、第2段階では主にA1とA5を審査しており、A4も必要に応じて審査していると考えられます。なお、A4を考慮せずに認定することは科学的とは言えません。政治的認定と言えます。

なお、政治的認定であるから認定に問題があると主張するつもりはありません。科学的に真実を探求する制度ではなく、救済を目的とした制度ですから、政治的認定であることには大きな問題はありません。

一方、厳密な因果関係の審査では、A1、A4、A5の3項目に加えて、A2、A3、A6も審査の対象となり、因果関係ありとするには、それらのうち最低1つの項目を満たす必要があると考えられます。

以上をまとめますと、ワクチン接種後に生じたすべての有害事象を救済認定するわけではなく、時間的関係の妥当性のない有害事象とか、他の明らかな原因のある有害事象とかの非合理的な申請は救済認定しない、そして医学的合理性が欠落している事例の申請は政治的必要性があれば認定するということです。

救済認定の審査の実態は、「非合理的な申請が排除され残った事例が認定される。そして、政治的認定を多数含む」というのが私の結論です。

【補足】 時間的妥当性の評価は有害事象ごとに異なり、実際には決して容易ではありません。アナフィラキシーは接種後4時間以内、熱性けいれんは接種後7日以内、その他の有害事象は接種28日以内が目安となります。ただし、有害事象の種類によっては接種28日以降であっても妥当と判断することが有り得ます。

A5の判断も実際には容易ではありません。溺死の場合は、入浴中に副反応として致死性不整脈が生じたために溺死したという可能性があります。自殺の場合は、脳に副反応として何らかの炎症が生じ、それが引き金となって自殺したという可能性は否定できません。

厚労省が公開している接種後死亡一覧には、溺死や自殺の事例が複数記載されています。今後、それらの事例が認定されるかどうか注視したいと考えています。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

【関連記事】
「お金くばりおじさん」を批判する「何もしないおじさん」
大人の発達障害検査をしに行った時の話
反原発国はオーストリアに続け?
SNSが「凶器」となった歴史:『炎上するバカさせるバカ』
強迫的に縁起をかついではいませんか?