「年金は先細り、定年は限りなく延長される方向で、これまで以上に長い期間働かなくては、まともに暮らしていけなくなってきました。そして、厄介なのは、55歳前後に待ち構える、役職定年の制度です」(田原さん)
「今も多くの企業で導入されている役職定年とは、役職者(管理職、部長、課長など)が一定年齢に達した場合、ライン系の管理職ポストなどをはずれて、 非ライン等の専門職に異動する人事制度です」(同)
ダイヤ高齢社会研究財団(30代・60代の働き方に関する調査報告書/2018年)によれば、役職定年後の年収は、9割以上の人が減少になり、現状維持も1割弱いるものの、全体の4割が年収50%未満という、厳しい現実があります。
「役職定年後、約7割の人が、所属異動がない状態で、以前と同じ職場で同じ仕事をしています。 こうした処遇は、当然仕事に対するモチベーションに影響し、半数以上の人が『モチベーションがかなり下がった』『やや下がった』と回答しており、年収の減少率が高いほどモチベーションダウンする傾向が見られます」(田原さん)
「また、『元部下が上司になるなど、 職制面で自分がやりにくかった(28.0%)』『自分が主導した部署での権限がなくなり、自分が不満だった(21.7%)』『やりがいのない職務だった(20.3%)』といった不満も見られます」(同)
これからは、「経験知や才能(強み)」で稼ぐ時代です。あなたが長年蓄積してきた「経験知」に対して、これまで以上に、正当で高価な報酬が得られるのは当然だと田原さんは言います。
セカンドキャリはどうあるべきか本書ではいくつかのパスが示されていますが、比較的容易なのが高等教育での教鞭ではないかと思います。学校法人は民間企業と違い、経営が行き詰まったからといって即座に破綻するわけでもありません。補助金や助成金などによって、学校法人は守られているためです。
いま、大学は実学を求めています。講師はどのように充足すべきでしょうか。近年、学生の関心事は圧倒的に就職であり就職先です。ただ大学の教授や准教授が、就職に関する実践的なアドバイスができるかというと、なかなか難しいでしょう。
大学教員というのは、専門分野の研究のプロであって、試験問題の解法テクニックを教えるプロではありません。「簿記論」を教えている講師が、必ずしも「日商簿記検定講座」を担当できるとは限らないのです。結局のところ「モチは餅屋」とばかり、こういった実務系講座は外部から担当講師を探すことになります。
さらに大学は、「公開講座」や「エクステンション講座」と呼ばれる講座を行なっています。このような一般向け講座は全国の大学・短大で実施されています。講座内容は、アカデミックな講座のみならず、「経営」「営業」「広告宣伝」「流通」「簿記」「絵画」「手芸」といった講座までさまざまです。実務家にしかできないコンテンツが増加傾向です。
大学講義の裾野は拡大しています。それに伴い実務家が大学に教壇できるチャンスは増えています。専門性があれば誰にでもチャンスがあるといえるのかも知れません。
尾藤 克之(コラムニスト・著述家)
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2年振りに22冊目の本を出版しました。
「読書を自分の武器にする技術」(WAVE出版)
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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