「仕事に取り組めなくなる」―西野式の問題点
西野式の最大の問題点は、一般の人だと仕事にとりかかれず先送りしてしまうということだ。
取り組むときに「これから○時間もこの仕事に取り組まなければいけないのか‥」と感じることになる。そうすると心理的なハードルが上がり「明日また、がんばればいいや」と先送りしてしまう。このスタイルだと今まで通り、締め切りギリギリまで仕事に取りかかれない。
するとどうなるか。「ヤバい。締切が近づいているのに全然やれていない」と追い詰められるストレス。いざ仕事にとりかかってみたら予想以上に大変な仕事であることが判明し「今日は深夜まで残業だ……」という予想外の残業の発生。
あるいは「事前にAさんに資料をお願いしなければいけなかった。今からだと締切に間に合わない……」という不測の事態の発生。いずれも社会人なら誰しもが経験したことがあるはずだ。また、まとめて片付けようとするとトラブルなどの突発的な事象が発生したときに困る。
要するに、西野式は玄人向けの仕事のやり方なのだ。仕事に熟練していれば、心理的ハードルを乗り越えることも難しくない。おそらく西野氏にとっては15時間執筆に取り組むことは難しくないのだろう(私なら取り組めずにハイキングに出かけることになる)。
一般のビジネスパーソンにとってはまとまった時間を確保することも難しい。そう考えると西野式は一般のビジネスパーソン向けではないと言える。
村上式をさらに進化させた「30分仕事術」仕事に取り組めなくなる原因となる心理的なハードルを下げるために最も有効なのは、仕事を細分化して毎日少しずつ取り組んでいく村上式の考え方を取り入れることだ。村上氏は仕事を作業単位(原稿用紙10枚)に細分化して毎日少しずつ取り組む方法を教えてくれた。
私が提案する30分仕事術は村上式の考え方をさらに進化させたものだ。村上式では原稿用紙10枚という作業単位に着目している。30分仕事術は、30分という時間単位に着目する。作業よりも時間に着目することでさらに心理的ハードルを下げることができるからだ。
たとえば今私はこの原稿を書いているが、この原稿を書くときに「よし。今日は5ページ書くぞ!」などと思えばプレッシャー(心理的なハードル)を感じ、書くことがとんでもなく困難になることだろう。
人は仕事に取り組むときに一定の成果(この場合は5ページ)を期待すると、心理的なハードルを感じる。そのことがわかっている私はこの原稿を書く前に「よし、ひとまず30分。この原稿に時間をかけよう」とだけ誓う。そうすることで、無事執筆に着手できているのだ。
同様に君が仕事に着手するときも成果・アウトプットに着目せず、取り組む時間にだけ着目すべきだ。レポート作成ならば「今日は2ページ書こう」ではなく「30分時間をかけよう」と思うようにする。勉強だってそうだ。「今日は参考書を10ページやるぞ」ではなく、ただ「30分勉強しよう」と思えばいい。
そのほうが結果的に効率良く働けるのだ。
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滝川 徹(タスク管理の専門家) 1982年東京生まれ。慶應義塾大学卒業後、内資トップの大手金融機関に勤務。長時間労働に悩んだことをきっかけに独学でタスク管理を習得。2014年に自身が所属する組織の残業を削減した取り組みが全国で表彰される。2016年には「残業ゼロ」の働き方を達成。その体験を出版した『気持ちが楽になる働き方 33歳大企業サラリーマン、長時間労働をやめる。』(金風舎)はAmazon1位2部門を獲得。2018年に順天堂大学で講演を行うなど、現在は講演やセミナー活動を中心に個人事業主としても活動している。
■1つの仕事に30分以上かけてはいけない理由(滝川徹 時短コンサルタント) ■複数の仕事を同時並行で進める仕事術が最強の理由(滝川徹 時短コンサルタント) ■30分仕事術のススメ ~仕事は一気に片付けるより、毎日少しずつやるほうが早く終わります~(滝川徹 時短コンサルタント) ■仕事に意思は関係ない-先延ばし・先送りの画期的な解決方法「30分仕事術」とは?(滝川徹 時短コンサルタント) ■「朝礼は無駄」発言の若手社員を問題視する人達に欠けている視点。(滝川徹 時短コンサルタント)
編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2024年4月12日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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