資本の国内への環流が必要
このように円安の影響は立場によって違うが、単純化するとGNIは企業収益をあらわすのに適しており、GDIは雇用や消費との相関が強い。GNIとGDPのギャップが所得収支だが、2010年代に日本企業が急速にグローバル化したため、そのギャップが拡大した。
これを是正するには、まず海外法人に「外部留保」されている利益を国内に環流させる必要がある。それが財務省も検討しているリパトリ減税である。これは海外収益の本社への送金を減税する措置で、アメリカでは2度おこなわれて大きなドル高効果があった。
ただこの効果は一時的なので、長期的には対内直接投資を増やす必要がある(図3)。これはGDPのわずか5%で、北朝鮮より低い。その原因は法人税率がアジア最高で、経営者が企業買収をいやがり、雇用規制などの非関税障壁が大きいためだ。これを是正する規制改革が必要である。
図3(唐鎌大輔氏)
イギリスは固定為替相場時代の1ポンド=900円から190円まで通貨が1/5に減価したが、国内の金融機関を海外に開放する「ビッグバン」で投資を呼び込んで復活した。「日本版ビッグバン」は1990年代におこなわれて銀行の破綻をまねいたが、今度は本当に資本市場を開放する「資本開国」が必要である。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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