また、近年の実績として、学校などの建替えにおいて延べ床面積がおおよそ1.3倍になっております。
現在進行中の例として、中野区内にある鍋横区民活動センターの建替え計画においては、表3に示すように延べ床面積が530㎡から1.79倍の949㎡へと増加しています。
財政当局が示す更新の前提条件は、「現在と同じ延床面積で更新」としているにもかかわらず、担当所管では区民ニーズを反映するために面積が激増します。
10年間の財政フレームを構築し、財政計画を立案するも、区民の声にほだされて、箱モノを何でもかんでも作り続ければ、持続可能な財政運営は不可能となります。
一方で中野区において、そもそも延べ床面積が足りているのかという観点も必要ではあります。
図2は区民一人当たりの公有財産(建物)面積ですが、ご覧の通り中野区は23区内でワースト2位となっております。
区民一人当たりに必要な面積がいくつであるかは精査が必要であります。
先日、中野区議会の総務委員会の地方行政視察で名古屋市のアセットマネジメントについて伺いに行きました。
2020年から2050年までの30年間に人口が6%減少、生産年齢人口の割合低下も踏まえた財政の観点から、一般施設を同30年間で人口減少よりも多めの延べ床面積8%削減の方向性を示しております(表4)。
施設の維持・管理は人口当たりの延べ床面積ではなく、あくまで財政状況で考える必要もあるわけです。
様々と書き連ねしましたが、今後、自治体が所有・管理すべき施設は更新時期が迫っているものが多くあります。
住民の要望を聞けば、更新する施設の延べ床面積は増加しますが、財政運営として持続可能な自治体運営から遠ざかります。せっかく建て替えるにもかかわらず、面積が増加しなければ、住民感情として納得いかないこともあるでしょう。
しかし財政的に数十年安定できるだけの施設の規模を試算し、施設整備計画に反映していかなくては、財政は破綻していきます。試算の上で、ボリューム増加が許容できなければ、子ども達の世代に新たなる負の遺産となるだけです。
首長は住民にそのことをしっかりと説明できる能力と覚悟が必要です。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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