ではその様に間違った36協定を労働基準監督署に提出するとどうなるか?
この会社のトラックドライバーは申請通り年間750時間の残業が上限となり、それを超えたら36協定違反になって罰則が適用されてしまう。
ドライバーの残業時間の上限設定には申請が必要であること、間違った申請をしないこと、一見するとこんな当たり前の手続きで多くの運送会社がつまづいてしまう可能性がある。これは2024年問題を更に悪化させるかもしれないと筆者が大いに危惧している問題点だ。
全ての業種に当てはまる36協定問題実は2024年問題とは運送業界だけの問題ではない。運送業界以外にも建設業界や医療業界にも2024年問題は存在する。それぞれ残業時間の上限などは違うのだが、36協定が重要なのは同じだ。
建設業界と医療業界も、2024年問題のスタートに合わせて、36協定は新様式に変更される。運送業界や建設業界、医療業界などの2024年問題の対象業種以外にも、当然残業時間の上限は設定されている。
ただ、理屈は今回解説した運送業界と同じだ。何もせずに自動的に残業が認められる業種は存在しないと考えて良い。
残業が必要な会社はそれぞれの上限を守りつつ、会社の実態に合った時間数を記載した正しい36協定を作成して労働基準監督署に提出して欲しい。これは企業にとっての問題というだけではなく、適切な労務管理は従業員にとっても極めて重要であることは言うまでもない。
そして2024年問題をクリアするために重ねてきた努力を無駄にすることなく、社労士としては労使ともに働きやすく企業が経営されることを願っている。
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林 秀樹 社会保険労務士 林労務経営サポート代表 株式会社エンパワーマネジメント代表取締役 社会保険労務士。林労務経営サポート代表。株式会社エンパワーマネジメント代表取締役。1972年生まれ。2001年に社会保険労務士事務所「林労務経営サポート」を開業。2018年に人事コンサルタント会社「株式会社エンパワーマネジメント」を設立。訴えられない会社作りをモットーに、他の社会保険労務士が敬遠しがちな「運送業の未払い残業代対策のための賃金制度作成」「問題社員対応」等を得意とする。「1DAY就業規則作成サービス」を開発し全国各地に顧問先を持つ。上場企業で企業リスクに関するセミナー講師の実績も多数。
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編集部より:この記事は「シェアーズカフェ・オンライン」2023年11月24日のエントリーより転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はシェアーズカフェ・オンラインをご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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