「専守防衛」とは何か

「専守防衛」とは、侵攻してきた敵を自国の領域内で軍事力をもって撃退する受動的な防衛戦略であり、長年、日本の安全保障上の基本方針とされてきた。

しかし、「専守防衛」はまさに「本土決戦」であり国土が戦場になるため、人的物的被害が甚大である。そのため、「専守防衛」ではなく、自国の領域外で軍事力をもって敵を撃退することが、世界的な共通の認識である。2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を契機に、日本では「専守防衛」だけで果たして日本国民を守れるのかが安全保障上の重要課題となった。

ウクライナの現状

ロシアによる国際法違反の侵攻を受けたウクライナは、米国をはじめNATO諸国の軍事支援もあって一時は善戦したが、反転攻勢は所期の目的を達せず、戦況は予断を許さない状況である。欧米諸国の「支援疲れ」もあり、さらに戦争が長期化すれば、最悪の場合は軍事大国であるロシアによる首都キエフ陥落も否定できない状況と言えよう。

ゼレンスキー大統領 同大統領Fbより

この2年近く「専守防衛」により専ら国土を戦場として対ロシア防衛戦争を余儀なくされたウクライナ側の人的物的被害は甚大であり、兵士や一般市民を含む多数の犠牲者を出し、国民の徴兵逃れなど、国民の疲弊はもはや限界に近づいていると言えよう。

「専守防衛」の悲惨

ウクライナの悲惨はまさに「専守防衛」の悲惨である。ウクライナ側の「専守防衛」により侵攻したロシアは自国領土への反撃がないため、際限なくウクライナへの武力攻撃が可能である。すなわち、ロシアにとっては、自国領土への有効な反撃がないため、首都キエフを含むウクライナ全土を完全に制圧するまで武力攻撃の継続が可能なのである。

これが「専守防衛」の冷厳な現実である。日本も「専守防衛」を堅持する限り有事の際はこのような現実を覚悟しなければならないのである。