私が銀行に勤めていた昭和50年代後半、普通預金は3%、定期預金は商品によっては8%近い金利がついていたように記憶します。それでお孫さんにプレゼントを買ってあげたり、ご夫婦で旅行に行かれたりしていたことを考えると、難しい金融理論も大切なのでしょうが、国民の実感に近い政策もまた必要なように思います。

ロシアのウクライナ侵略は厳しく批判しても、イスラエルのガザ攻撃は「自衛権の行使」として国連安保理で拒否権を使って擁護するアメリカの外交姿勢をどのように理解すべきなのでしょうか。

「イエス・キリストを十字架にかけよ、その責めは自分たちが負う」とローマ総督ポンテオ・ピラトの前で声高に主張したのはユダヤ教徒たちだ、それゆえにすべてのユダヤ人はキリストの処刑の責任を負うべきだ、としてユダヤを迫害することを反ユダヤ主義というならば、おもにヨーロッパのキリスト教徒(カトリック)の指導層によって反ユダヤ主義は教義として固定化され、ゆえにユダヤ人は長く迫害を受けて世界各地に離散してきました。

これに対して、アメリカ全人口の3割を占めると言われる福音派(エヴァンジェリカルズ)は「ユダヤ人迫害は間違っていた」とし、「ユダヤ人が約束の地であるイスラエルに多く帰還し、エルサレムにユダヤ人が集まるほどキリストが暮らしていた頃のパレスチナに近づき、キリストが千年至福王国の王として復活する」とし、これがイスラエル支持の源流となり、この至福の王国の実現は1948年のイスラエル建国によって可能となったと考えるのだそうです。この福音派の影響はどれほどのものなのか。

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我々はアメリカを唯一の同盟国とし、日米同盟を基軸として外交を展開していますが、そのアメリカをどれだけ理解しているのか、己を顧みて今更ながら甚だ疑問です。今週、東京女子大学学長の森本あんり氏やイスラム研究者の宮田律氏の著作に接し、精読する必要を強く感じました。

かつてリクルート事件を受けて自民党政治改革本部長に就任された伊東正義元外相・元官房長官が、清廉潔白で本当に立派な、真の国士とも言うべき方だったことは以前、この欄でも述べました。

不覚にも今回初めて知ったのですが、1980年9月23日の国連総会一般討論において伊東先生は、「日本は、公正かつ永続的な中東和平実現のためには、イスラエルが1967年戦争の全占領地から撤退し、且つ国連憲章に基づき、パレスチナ人の民族自決権を含む正当な諸権利が承認され、尊重されなければならないと考えております」と述べておられました。

今このような発言をすれば「テロリストの味方なのか」との批判が殺到することが容易に予想されますが、もう一度先人たちの足跡を辿る必要があると痛感しています。

皆様、ご健勝にてお過ごしくださいませ。

編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2024年2月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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