三種類のCIづくり
第四としては、三種類のCIを地方創生では意識しておきたい。元来CI(Corporate Identity)は企業の社風や個性などを表わすが、それをコミュニティに応用してみたのである。
一つは「コミュニティ・アイデンティティ」であり、その地方や地域社会を象徴するシンボルづくりを意味する。
二つ目は「コミュニティ・イノベーション」として、新しいものへの志向を失わないことがあげられる。いわゆる「進取の気風」(enterprising spirit)がこれである。
三つ目は「コミュニティ・インダストリー」であり、その地方や地域社会に根ざした資源を活用して製造して、販売まで念頭に置いた産業活動である。
「政治とカネ」は唯一の判断基準ではない「五き」と3つのCIへの留意が、主体とされた「産官学金労言」にどこまで共有できるか。その際の政治家の情熱と見識は、次々世代の負担までも視野に収めた2025年からの地方創生でどこまで発揮されるか。
第50回の衆議院選挙では「政治とカネ」が単一の争点と化していて、「所得の増加」「経済成長」「物価の安定」などがこれに加わっている。
少し異なった角度でみれば、国民所得、国民生産、国民消費への総合的な配慮を行って、日本の次世代次々世代のための「地方創生」に本気で取り組む工程表を示す政党や候補者がどれくらいいるのか。選挙演説のその先には新しい「日本創生」が示されているのか。
これらについても立候補者は情熱と見識を示して語ってほしい。
【参照文献】
Bourdieu,P.,1979,La distinction:critique social de judgement, Éditions de Minuit.(=2020 石井洋二郎訳『ディスタンクシオン1』[普及版] 藤原書店). 金子勇,2011,『コミュニティの創造的探求』新曜社. 金子勇,2014,『「成熟社会」を解読する-都市化、高齢化、少子化』ミネルヴァ書房. 金子勇,2016,『「地方創生と消滅」の社会学』ミネルヴァ書房. 金子勇,2018,『社会学の問題解決力』ミネルヴァ書房. 金子勇,2023,『社会資本主義』ミネルヴァ書房. 金子勇編,2024,『世代と人口』ミネルヴァ書房. Kotlikoff,L.J.and Burns,S.,2004,The Coming Generational Storm,The MIT Press.(=2005 中川治子訳 『破産する未来』日本経済新聞社). 森嶋通夫,1999,『なぜ日本は没落するか』岩波書店. Putnam,R,D.,2000,Bowling Alone:The Collapse and Revival of American Community,Simon & Shuster.(=2006,柴内康文訳『孤独なボウリング』柏書房). 竹本昌史,2016,『地方創生まちづくり大事典』国書刊行会. Weber,M.1921,Politik als Beruf.(=1962、清水幾太郎・清水礼子訳「職業としての政治」『世界思想教養全集18 ウェーバーの思想』河出書房新社:171-227). 宇沢弘文,2000,『社会的共通資本』岩波書店.