参考までに、最近では、バチカン刑務所に拘留された人物は、教皇ベネディクト16世の執務室から機密文書を盗み出した通称「ヴァティリークス事件」(Vatileaks-Fall)の主犯、元従者パオロ・ガブリエレ氏だ。同氏はベネディクト16世から恩赦を受けて早期釈放された。同氏のバチカン独房生活は59日間だった。

バチカン刑務所ではなく、この世の刑務所で拘留生活を体験した枢機卿も1人いる。フランシスコ教皇に財務省長官に任命されたジョージ・ペル枢機卿は1990年代に2人の教会合唱隊の未成年者に性的虐待を犯したとして2019年3月、禁錮6年の有罪判決を受けて収監されている。同枢機卿は2020年4月、無罪を勝ち取ったが、今年1月10日、ローマの病院での通常の股関節手術後、心臓病の合併症を起こして急死した。81歳だった。同枢機卿は約400日間、独房生活を強いられた最初の高位聖職者だった(「400日『独房』にいた枢機卿」2020年10月16日参考)。

イタリア北東部のトリエステのカトリック教会の神父(当時48)は13歳の少女に性的虐待を行ったことを司教に告白した後、部屋で首を吊って死んでいるところを発見されている。未成年者への性的虐待で12年の刑期を言い渡され米マサチューセッツ州の刑務所に拘留されていた米国のポール・シャンレィ神父(Paul Shanley)は2017年7月末、刑期を終えて出所した。同神父の性犯罪は、米ボストングローブ紙が摘発し、米カトリック教会の聖職者の性犯罪問題を暴露、2002年のピューリッツァー賞を受賞している(「元神父は刑務所で何を考えたのか」2017年8月3日参考)。

罪を犯す聖職者の増加を受け、バチカンの敷地内で新たな刑務所を増設することも一つの案だが、イタリアの刑務所を利用することが現実的な選択肢だ。イタリアとバチカン間の1929年のラテラン条約以来、教皇庁はイタリア領土内の刑務所に受刑者を収容できるようになったからだ。イタリアの刑務所の収容能力はバチカン刑務所の比ではない。

ノルウエーの大量殺人犯アンネシュ・ブレイビクは独房に入った後、インターネットの接続や読みたい本などを次々と刑務所側に要求し、「ノルウエーの刑務所はホテルのようだ」と言われたことがあった。バチカン刑務所であろうが、イタリア刑務所であろうが、拘留された聖職者は自身が犯した罪の悔い改め、そして死後、神の「最後の審判」を受けるための心構えを準備しなければならないはずだ。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年12月22日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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