5月に予告編が公開されて以降、さまざまな問題が指摘されてきた新作ゲームタイトル『Assassin’s Creed Shadows(アサシン クリード シャドウズ)』。開発元の仏Ubisoftは今月26日、11月15日に予定していた世界販売(日本を含む)を2025年2月14日に延期すると発表した。Ubisoftが発表した英語版のリリースには予約注文をした人に返金を行うと書かれている一方、Ubisoft Japanが発表した日本語版のリリースには返金対応について記載がないため、一部SNS上では「日本語版ユーザーだけ露骨に冷遇する姿勢」などと話題を呼んでいる。また、25年2月には『モンスターハンターワイルズ』」『龍が如く8外伝 Pirates in Hawaii』といった人気シリーズの新作リリースが目白押しで、同年中には『Ghost of Yotei(ゴースト・オブ・ヨウテイ)』の発売もあるため、セールス的な苦戦を予想する声も出ている。

 2007年に第1作が発売されたアドベンチャーゲーム『アサシン クリード』は累計売上本数が1億5000万本以上に上るとされる世界的人気シリーズ。20年発売の『アサシン クリード ヴァルハラ』は累計売上が10億米ドル以上となっている。昨年(23年)10月には『アサシン クリード ミラージュ』が発売されている。

 そんな同シリーズの新作『アサシン クリード シャドウズ』の予告編が公開されたのが今年5月。以降、以下のような点が相次いで指摘され批判を呼んできた。

・過去のほとんどの同シリーズでは舞台となる国・地域の現地人を主人公としてきたが、今回は日本を舞台としているにもかかわらず主人公が歴史上実存した黒人(弥助)となっている(もう一人の主人公は日本人)。

・城の畳が正方形だったり、侍が甲冑姿で町中を歩いていたり、織田信長の横にその家臣が座っていたり、田植えをしているシーンに満開の桜や「豊作だな」といったセリフが出てきたりと、歴史的事実・慣習や日本の描き方に事実に即していない部分がある。

・主人公が日本人ではない点に疑問の声が広がるなか、メディアのインタビューで開発者が「日本人ではない私たちの目になれる人物を探していた」という発言を行い、差別的だとの指摘が広がり、説明なく当該箇所が記事内から削除された。

・日本語の吹き替えゲーム映像に中国語の字幕を使用。

・コンセプトアート内で画像を無断使用。

 一連の事態を受けUbisoftは7月、「豊かな歴史と文化の忠実な表現を憂慮される皆さまのご意見は深く尊重されるとともに、日本の皆さまにご懸念を生じさせたことについて、心よりお詫び申し上げます」「あくまでも歴史上の実在の出来事や人物にインスパイアされたフィクション作品」などとする謝罪コメントを発表。そして今月26日にはリリースの延期を発表し、以下のように説明しているが、相次いで寄せられてきた批判については触れていない。

「ゲーム内の主要機能を含むゲームプレイ体験を改善するため、私たちには更なる時間が必要という結論に至りました」

「この決定は本作において、延いては皆さまのご期待に沿えるゲームプレイ体験を実現するための最善の選択であると信じております」

Ubisoftの説明が不十分だった

 延期を伝えるリリースで議論を呼んでいるが返金対応に関する点だ。Ubisoftから出された英語版リリースには予約注文をした人には返金対応を行うと書かれているが、Ubisoft Japanから出された日本語版リリースには、その旨の記載はなく、「ご予約の方には最初の拡張コンテンツを無料でご提供させて頂きます」としか書かれていない。これを受けSNS上には以下のようにさまざまな声があがっている。

<返金対応はされるんですよね?>

<中国版にも返金対応との記載があるのに、なぜ日本では返金しないのでしょうか?>

<予約返金対応の文章消えてませんか?原文にはあったのになぜ?>

<「どうせ英語読めないから日本語の方は書かなくても問題ないだろ」って考え>

 ゲーム業界関係者はいう。

「Ubisoft本社から出されているリリースには返金対応すると書かれているので、日本だけ返金対応がされないということはないと考えてよいと思います。今回のアサクリ騒動についていえば、基本的にゲームはフィクションなので歴史的な事実関係や過去の日本人の習慣に即していない点があっても、ことさらに批判されるべきではないでしょうが、『アサクリ』シリーズは忠実な描写をウリにしていることも影響した面はあるでしょう。また、日本を舞台にした本作だけ主人公の一人を日本人にしなかったというのも、開発サイドとしてはいろいろな考えや狙いがあってのことでしょうから、そのキャラクター設定に抵抗がある人は買わなければいいだけという考えもあるでしょう。ただ、主人公のキャラ設定や画像の無断使用の件も含めて、Ubisoftの説明が不十分であったというのは確かであり、その不誠実さが批判に油を注いでしまったと感じます」