しかし、その後に発足した政治改革推進本部の議論は、小選挙区制導入派対中選挙区制維持派の論争に特化してしまい、政治資金についても最低限の透明性の確保や寄付の上限規制などは行われたものの、印象としては政党助成制度の導入だけに終わってしまったように捉えられ、これが「小選挙区制になったのに政治はかえって悪くなった」という思いを世の人々が抱くようになった原因だったとも思われます。

宮沢内閣不信任案が可決され、解散・総選挙で自民党が過半数を割って下野、その後誕生した細川政権の下で政治改革国会が開かれ、私は野党の自民党議員として政治改革特別委員会で質疑に立ちました。

選挙制度だけを変えて、地方分権も進まず、政党法も制定しなければ、小選挙区制度の悪い面が出てしまう」という趣旨を細川総理をはじめとする関係閣僚に質問したのですが、本質的な答弁は全く得られず、大いに失望するとともに、今後の行く末に不安を感じたものでした。残念ながらその危惧が現実のものになりつつあります。

今日の自民党の惨状は、政治改革大綱の精神を忘れてしまったことに起因するように思われますが、あの時のことを憶えているのは我々当選12回以上のごく少数の議員に限られます。私自身、この内容を忠実に実践してはきませんでした。小泉・福田・麻生内閣には派閥に籍を置いたまま入閣しましたし、幹事長として党の実務をお預かりした時には、派閥こそ離脱したものの、政治改革大綱を党内に徹底することも致しませんでした。慙愧に耐えず、深く反省することしきりです。

岸田総理・総裁が昨日の記者会見で「火の玉になって政治改革の先頭に立って戦う」との決意を示したのですから、これを受けて自民党はきちんとこれに対応し、決意を具現化する体制を早急に整えなければなりません。昨日の総務会で、新しい政治改革本部を立ち上げ、政治改革大綱を読み直すことから始めるべきと提案しましたが、執行部がこれに応えてくれることを切に望みます。

新閣僚の就任にも、代り映えしない、などとの批判がありますが、顔ぶれは人格識見ともに優れた人選で安堵しております。

予算や税制の会議を終えた今夕の永田町には、今後何が起こるのかをじっと見つめているような、不気味な静寂が漂っています。

今年も余すところあと僅かとなりました。皆様、どうかご健勝にてお過ごしくださいませ。

編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2023年12月15日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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