ガザ紛争で多くのパレスチナ人が犠牲となり、負傷しているのは、「ハマス」がパレスチナ人の女性、子供たちを自身の戦闘の盾に利用しているからだ。彼らは病院や学校などの施設に潜伏し、イスラエルを攻撃している。一方、イスラエル側は可能な限り民間人の犠牲を抑えるために、戦闘開始地域から住民が避難するように呼び掛けたビラを配っている。通常の戦争でビラを配って民間人の避難を呼び掛ける国があるだろうか。「ハマス」はガザのパレスチナ人に避難せよと呼び掛けたことがあったか。
ウクライナと戦闘しているロシア軍を見てほしい。彼らは民間施設をターゲットとし、ウクライナのエネルギー供給施設などを破壊している。ロシア軍の軍事行動こそ人道上の犯罪だ。「ハマス」とロシア軍の違いは後者はれっきとした軍事組織であり、前者はイスラム過激派テロ組織だ。両者に共通している点は民間人を自身の戦いに利用し、戦いを有利にしようとしていることだ。
それにしても、エルドアン大統領の言動には首を傾けざるを得ない。繰り返すが、ロシアを批判せず、「ハマス」のテロ活動を黙認し、同時にウクライナ戦争の仲介役を演じ、ハマスへ連帯を表明しているのだ。エルドアン大統領はイスラム原理主義者の政治組織「ムスリム同胞団」を支持し、イスラム過激派運動の背後にその「ムスリム同胞団」が暗躍していることは周知のことだ。
なお、イスラエル軍はガザ最南部ラファへの攻撃を開始し、北部でも戦闘を再開している。最大の同盟国・米国はイスラエルに軍事攻撃を考え直すべきだと警告している。「ハマス」の奇襲テロへの報復は理解できるが、軍事攻勢で多くのパレスチナ人が犠牲となれば、結果的には第2、第3の新たな「ハマス」が生まれてくる。「ハマスの壊滅」を掲げるネタニヤフ首相は厳しい選択を迫られている。
編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2024年5月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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