ファストフードチェーン「ケンタッキーフライドチキン(KFC)」を運営する日本KFCホールディングス(HD)は13日、2024年4~6月期の連結決算を発表し、営業利益が前年同期比73%減、純利益が33%減となった。KFCは昨年2回にわたり値上げを行った一方、頻繁に値下げキャンペーンを実施しているが、その戦略が失敗しているのではないかという声があがっている。減益の理由について、業界関係者の見解を交えて追ってみたい。

 全国に1232店舗(2024年3月31日現在)を展開し、フライドチキン専門店チェーンとしては圧倒的な強さを誇るKFC。原材料価格やエネルギーコストの高騰を受けて外食業界で値上げが広がるなか、KFCも昨年10月に一部商品の値上げを実施。主力の「オリジナルチキン」は290円から310円に、「チキンフィレバーガー」は390円から440円に、「ポテトS」は270円から290円に、 「カーネルクリスピー」は270円から290円に、「挽きたてリッチコーヒー」は260円から270円に改定。「オリジナルチキン」については昨年3月にも260円から290円に改定されており、1年の間に50円、約2割の値上げが行われた。

 現在は期間限定キャンペーンとして「お盆バーレル」(3490円/税込み)で販売しており、「1060円おトク」と表示しているが、KFCは頻繁に複数の商品をセットにして「単品積上げ価格」と比べて低い価格であることをウリとするパック商品を投入している。今月21日からは「オリジナルチキン」3ピースと「カーネルクリスピー」2個がセットになった「カーネル生誕祭パック」(990円)を期間限定で販売するが、これも単品積上げ価格より520円値引きしている点を宣伝している。

 外食チェーン関係者はいう。

「売上高は前年同期比でほぼ落ちていませんが、今年に入って既存店客数が前年同月比減の月が続いており、2割ほど落ちている月もあるのは危険信号といえるでしょう。値上げで客離れが起きているなかで、値上げによる客単価の引き上げで売上高をなんとか維持している様子がうかがえます。また、営業利益が大幅に落ちているのは、レギュラーメニューに対して、利幅が少ない値下げキャンペーン商品の販売数が占める割合が高くなっていることが原因だと考えられます。値下げキャンペーンを連発すると、消費者からは『レギュラーメニューが割高なのでは』と疑問を持たれてレギュラーメニューの買い控えが起き、値下げしないと買ってくれないという“値下げキャンペーン依存”の負のスパイラルに陥るリスクがあります。そしてKFCはすでに、この悪循環の入口に足を踏み入れてしまっているようにみえます」

 別の外食チェーン関係者はいう。

「たとえばKFCでオリジナルチキンを3つ買うと930円でほぼ1000円ですが、スーパーの総菜コーナーだと400円台で買えます。また、ドリンクは値引き期間以外はコーヒー1杯が270円もする。マクドナルドだとSサイズのコーヒーが120円で買えることを考えても、ファストフードチェーンのなかでKFCは非常に高価格だといえます。その高価格に見合う価値があると消費者に感じられなければ、徐々に売上も落ちてくる可能性があります」

アプリとホームページをリニューアル

 KFCといえば4月に新たなアプリとホームページをリリースした際に以下の事象が生じたことが記憶に新しい。

  ・ログインできない
  ・以前にKFCのアプリ/サイトで使用していたメールアドレスでログインできない
  ・アプリの登録フォーマットの携帯電話番号と郵便番号の桁数が足りない
  ・ワンタイムパスワードが届かない
  ・レジでスマホアプリの会員証を開こうとすると、ログイン→ワンタイムパスワード→ログイン→ワンタイムパスワードとなって会員証にたどり着けない
  ・登録していたチキンマイレージのデータが消滅している
  ・以前にKFCのアプリで連携していたポイントカードが未連携になっている
  ・ネットオーダーの画面上では「持ち帰り」か「デリバリー」の表示のみで、「店内飲食」の選択肢がない

 不具合の解消後も、UIや使い勝手に一部では不満の声も出ている。KFCのスマホアプリのモバイルオーダー機能について、ウェブサービス企業SEはいう。

「マクドナルドのモバイルオーダーでは『注文を確定する』ボタンの下に『注文をキャンセルする』ボタンがあるが、KFCのアプリではどこにもキャンセルボタンが表示されず、途中でキャンセルをしようとするユーザが戸惑ってしまう可能性がある。また、過去に会員登録をしたユーザが注文の操作を進めていると、途中でログインを求められて、メールアドレスとそのメルアドに送信されるワンタイムパスワードの入力を求められることがあり、普段あまりスマホでメールを使っていない人はワンタイムパスワードを見ることができずに途中で注文を断念するケースもあるかもしれない」(24年7月12日付け当サイト記事より)

 外食チェーン関係者はいう。

「サイトをみて少し気になったのが、価格を確認しようとメニューのページに行っても、価格が表示されていない点です。あれ? と思っていろいろと探してみると、利用する店舗を設定すると価格が表示される仕様になっているようなのですが、ストレスを感じるユーザもいるかもしれません。今の消費者はとにかく行動がスマホファーストなので、『スマホアプリがイマイチ』という印象を持たれると、売上や客数にじわじわ影響してくるため、徐々に見直しをしていったほうがよいかもしれません」

 KFCは経営面では大きな転機を迎えている。米投資ファンドのカーライル・グループは5月、TOBをはじめ日本KFCHDの筆頭株主だった三菱商事などから株を買い取り、日本KFCを買収すると発表。9月をめどに完全子会社化する。これにより日本KFCHDは上場廃止となる。

(文=Business Journal編集部)

提供元・Business Journal

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