小売店でセルフレジの導入が広がるなか、大手総合スーパー(GMS)チェーン・イオンリテールが導入したセルフレジ「レジゴー」が好評だという。レジゴー利用の客単価は通常レジに比べて1.3倍高くなるという効果も出ており(8月22日付「ITmediaビジネスONLiNE」)、導入店舗を拡大中だが、セルフレジ導入で混乱や問題が生じている店舗も少なくないなか、なぜイオンのセルフレジは成功しているのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。
ローソンは国内の全店舗、ファミリーマートは国内店舗の約4割で導入するなどセルフレジが普及しているコンビニエンスストアと同様に、スーパーマーケットでも設置する店舗が増えている。全国スーパーマーケット協会「2022年スーパーマーケット年次統計調査報告書」によれば、スーパーのセルフレジの設置率は25.2%、セミセルフレジ(セルフ精算レジ)は75.1%となっている。
西友、イオン、オーケー、いなげや、マルエツなど大手スーパーチェーンではセルフレジが並べられたスペースが見られるようになったが、商品バーコードの読み取りは店員が行い、客は支払いのみを自身で行うセミセルフレジの形態がいまだに主流だ。
「西友はセルフレジ導入に積極的で、多くの台数を設置して店内放送でもセルフレジの使用を呼びかけるなど、できるだけお客をセルフレジに誘導しようとしているが、スーパーではなかなか普及しづらい面がある。コンビニと比べて一回の来店あたりの購入品数が多い点や、デジタル操作に不慣れな年代の客も多いという点などが理由として挙げられる。
また、お客からの問い合わせや操作ミスへの対応のために、3~5台につき1人くらいの割合で従業員を配置する必要があるため、セルフレジを導入したとしても大幅な人件費削減につながりにくく、操作に不慣れな客に会計をやってもらうより店員がやったほうがスムーズで待ち行列が生じにくい場合もある。有人レジを減らしたからと無理に従業員を削減することによって一人当たりの忙しさが増してしまうと、離職者が増えてオペレーションが回らなくなってしまったり、新規採用の手間とコストが生じてしまう恐れもあるので、人員削減は簡単ではないという問題もある。そのため、業界全体でみると、完全なセルフレジではなくセミセルフレジのほうが主流になっており、レジ一台ずつに店員が張りつく光景が残っている」(大手小売チェーン関係者)
従来のセルフレジと大きく異なる
イオンの「レジゴー」は従来のセルフレジと大きく異なる。客はアプリをインストールした自身のスマートフォン、もしくは店内に置かれた専用端末をカートに装着されたホルダーに置き、それを使って買い物をしながら商品のバーコードをスキャンしていき、すべての商品をカゴにいれたら専用ゲートに持っていき、ゲート入口の「お支払いコード」をスキャンする。スマホ・専用端末画面に表示された番号の無人レジに進み、あとは一般的なセミセルフレジと同様に支払い手段(クレジットカード、QR決済サービス、現金など)を選択して支払いを行うという流れだ。お客にとっては、買い物をしながら合計金額を確認できたり、カゴの中身を把握しやすいといったメリットがある。
前出「ITmediaビジネスONLiNE」記事によれば、レジゴー利用の客単価は通常レジに比べて高くなる傾向にあり、導入店舗はすでに300以上に達しているという。
「レジゴー導入でアルバイト・パート従業員の数を減らすことができ、加えて客単価の上昇効果が出ているのだとすれば、ひとまずは成功ということになる。店舗側にとってセルフレジは、多くの客が利用するようになってレジ待ちの行列が解消され、さらに従業員の削減、つまり人件費の削減につながらないと意味はないので、数%程度の利用率ではダメ。なので、どれだけ利用率を上げられるかがカギとなってくるが、イオンのレジゴーの利用率が大きく上がるかどうかは、ちょっと疑問を感じる。
まず、商品をカゴに入れるたびに商品を端末にかざして自分でスキャンしなければならないというのは、かなり面倒と感じる客は一定数いるだろう。単品売りの野菜などバーコードが貼られていない商品は、端末で『バーコードがない商品』のなかから探して選択するか、棚に掲示されているバーコードに端末をかざして読み取らなければならず、結構な手間となる。重い商品のバーコードを端末に読み取らせるのも大変。
一方、レジ待ちで行列に並ぶ必要はなく、買い物を始める際にカゴに大きなマイバッグを装着しておけば、精算が終わった後にいちいち袋詰めする手間が省けるのはメリットとなるので、そのメリットのほうが大きいと感じる客がどれだけ出てくるかにかかっている」