9日の衆院解散を受け、各党は物価上昇に苦しむ日本経済の浮揚に向けて政策を競い合う。前回の衆院選が行われた2021年からの3年間で、株価は大幅に上昇したが、物価高に苦しむ家計は消費に勢いが出ず景気回復の実感は乏しい。選挙戦では、当面の経済対策に加え、賃上げの継続や先行きを見据えた議論も求められる。

 日経平均株価は9日の終値で3万9277円と、前回の投開票直前から約1万円上昇した。今年2月にバブル絶頂期の高値を更新し、一時は4万2000円を上回った。企業業績も好調だ。財務省の法人企業統計によると、全産業(金融業と保険業は除く)の経常利益は23年度に過去最高の106兆円となり、21年度に比べ3割近く増えた。厚生労働省が集計した24年春闘の主要企業の賃上げ率は5.33%と歴史的水準に達している。

 だが、家計への恩恵は限定的だ。全国消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数で8月に前年同月比2.8%も上昇。いくら賃上げをしても効果が相殺され、物価上昇を反映した実質賃金は5月まで過去最長となる26カ月連続で前年水準を下回った。

 国内総生産(GDP)は4~6月期に名目の年換算で初めて600兆円を超えた。ただ、GDPの柱である個人消費は1~3月期まで4四半期連続で前期比マイナスと振るわない。

 選挙戦を控える中、政府・与党からは、石破茂首相が物価高などを克服するための経済対策を取りまとめるよう指示した。コメなどの値上がりが家計を圧迫する中、大企業から中小零細企業まで賃上げを継続できる環境を整えることが必要だが、具体策の策定は難航しそうだ。首相は「最低賃金を着実に引き上げる」と強調し、20年代に1500円にする目標を掲げたが、「非現実的」(経済界関係者)との見方が強い。

 一方の野党は、立憲民主党が給付と減税を組み合わせる「給付付き税額控除」導入などを主張。低所得世帯の負担を緩和する狙いがあるとみられるが、財政出動に頼る姿勢は与野党共通だ。

 三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は「物価高対策など目先の対策効果を競うだけでなく、景気拡大と財政健全化のバランスの在り方などデフレ脱却後を見据えた議論も期待したい」と指摘している。 (了)

提供元・Business Journal

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