政治
2024/12/19
原子力発電は高いのか?安いのか? 電気料金の原価から考える --- 尾瀬原 清冽
図3は2008年~2018年までの関西電力の電気料金改定時の原価の内訳です。減価償却費を示す茶色の部分もそれなりですが、燃料費、購入電力料を示す青色の部分の面積がはるかに大きく、電気料金に大きく影響していることがわかります。
2015年の原発が再稼動した後は、急速に燃料費、購入電力料が減少しています。しかし2018年の段階で、ほぼ震災前と同じ水準になっているため、これ以上の料金値下げは難しいと思います。
2. 原発の建設に必要な工事費の調達すなわち既設の原発は、発電させて有効活用させることで、燃料費、購入電力量が抑制されるので、足元の電気料金の値下げに大きく寄与します。
だからといって、新たに社債を発行して、新しい原発を建設することで電気料金を低廉なままで維持していこうと電力会社が判断するかと言うと、難しいと思います。
原発建設の新基準では、過去の新設時よりもはるかに高い建設費になることが想定されます。建設中に追加工事が必要になるかもしれません。発電開始後も何かの要因で運転が長期間停止すれば、その間は借金の償還だけが発生します。これらのリスクを考慮すれば、当然の判断でしょう。
また貸す側としても、最近は電力会社が赤字になっても、その赤字分を電気料金に反映させることを、国が認めないで値切ったりするため、電力会社が借金を返せなくなるかもしれない。と考えて社債の引き受けを渋るかもしれません。
私たちの生活に例えると、毎月の住宅ローンの返済は確かに大変ですが、それよりも食費や光熱費、通信費などの費用の方が大きく、生活への影響は大きいです。しかし、新たにローンを組んで新車を買うか?と考えると躊躇しますよね。貸す側も、借主のこの先の収入が安定していないと、新たなローンは怖くてかせられないということです。
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