大手牛丼チェーン「すき家」の一部店舗で、店内飲食でも、一般的な陶磁器やPET樹脂、ガラスなどの食器ではなく、プラスチック製の使い捨て容器による提供が始まっている。安さがウリのファストフードチェーンであっても、ハンバーガーチェーンなどを除くと使い捨てではない食器による提供が多いが、背景には何があるのか。また、使い捨て容器による提供にすると飲食店側にはどのようなメリット、デメリットが生じるのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。

 牛丼チェーン各社の注文・精算方法、料理の提供形態には違いがある。吉野家には券売機はなく(一部店舗を除く)、同店で見慣れたコの字型のカウンターかテーブル席などに座ると店員がお茶を運んできてくれ、口頭で店員に注文し、食べ終わった食器はそのままテーブルの上に置いたままにして退店する方式の店舗が多い。現在ではセルフ式の店舗も増えている。

 松屋の多くは券売機で発行される食券を客が持って席に着き、料理が出来上がると、受け取りカウンター上部にある画面上で食券に書かれた番号が出来上がりのステータスになり、客が自らカウンターに行き料理を受け取るという仕組みだ。松屋の公式アプリ「松屋モバイルオーダー」を使って来店前にスマホで注文と支払いを行い、表示されたQRコードを券売機にかざして食券を発行させることも可能。そして食べ終わった食器は返却コーナーに持っていくスタイルの店舗が多い。

 すき家は、入口付近の券売機、または席に置かれたタブレットから注文をするが、店員に口頭で注文することも可能(来店前にスマホアプリから注文・支払いすることも可)。食事後は食器をテーブルに置いたまま退店するが、セルフ方式で客が返却口に持っていく店舗もある。

客数への影響はないと考えられる

 店舗数ベースでは牛丼業界で圧倒的1位となっている「すき家」(1954店舗/7月現在)は、セルフ式店舗を増やしつつある。店内に設置されたタッチパネル式券売機で注文と精算を行い、発券された紙に印字された番号が呼び出されたら客がカウンターへ料理を取りに行き、食べ終わると客が食器を下げるという形態だ。店内飲食でも使い捨て容器による提供が行われているのは、このセルフ式店舗だ。

「セルフ式店舗を導入する目的は、配置する店員の数を通常の店舗より減らすことによるコスト削減なので、その削減効果を最大限にしようとすれば、食器を洗う業務をなくすために使い捨て容器を導入しようとなる。『すき家』の顧客のニーズは、とにかく安くボリュームのある料理を短い時間で食べることなので、食器が使い捨てのものになったからといって、それを嫌がって店舗の利用を控えるとは考えにくく、客数に影響はないだろう」(外食チェーン関係者)

 通常の食器から使い捨ての容器に変更すると、店側にとって、どのようなメリット・デメリットが生じるのか。自身でも飲食店経営を手掛ける飲食プロデューサーで東京未来倶楽部(株)代表の江間正和氏はいう。

「すき家のような、お客が安さや手軽さ、スピードを求めるお店におけるメリットとしては、消耗品費が少し上がるものの、洗い場担当の人件費=コスト削減になりますし、食器を洗う時間の節約によって料理提供時間の短縮にもつながります。また、業務終了時の片付けに要する時間も短縮されるでしょう。逆にデメリットは、消耗品費が少し上がることと、お客が『味気なさ』を感じることです。ただし、消耗品費は人件費の減少でカバーできますし、味気なさも今までとの比較であって、お客側の慣れで解消されることと思います。総合的にみればメリットのほうが大きいでしょう」