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「モータースポーツには神様がいる」と実感した第3期F1チャレンジ
ホンダの思い出はたくさんある。なかでもいちばん印象深いのは、これまで第2期、第3期、第4期と取材してきたホンダF1にまつわること。とりわけ第3期(2000-2008年)のことが強く印象に残っている。
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実は、60年におよぶホンダF1のなかで、成績的にもっとも低迷したのが第3期だった。なにしろ、F1のことは右も左もわからないまま参戦した1960年代の第1期でさえ4年で2勝を挙げたにもかかわらず、第3期は通算9シーズンに参戦してたったの1勝。それなのに印象深いのは、当時の福井威夫社長がしばしばサーキットを訪れ、われわれメディア関係者と熱心にコミュニケーションしてくれたことが大きいように思う。
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二輪のレース畑出身の福井社長はモータースポーツに明るく、大メーカーのトップであるにも関わらずレース専門メディアとも対等に議論できる博識振りで私たちを魅了した。そんな福井社長が、第3期ホンダF1で唯一優勝した2006年ハンガリーGPに居合わせたことは、ちょっと大げさにいえば「モータースポーツの神様」が存在していることを信じさせてくれるような出来事だった。
私は幸運にもその場に立ち会うことができたが、レース後の囲み取材では、両目を真っ赤にしながら、噛み締めるように優勝の喜びを語る福井社長の姿が本当に印象的だった。
それはトップの顔が見えることの大切さを思い知った瞬間だったといってもいい。これと似た時間を、いつか三部敏宏社長と共有できることを期待したい。
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文・大谷達也/提供元・CAR and DRIVER
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