このころには同氏の息子ドディ氏がダイアナ元皇太子妃と親しくなり、父親として鼻高々の様子がドラマ「ザ・クラウン」で描かれていましたね。

1997年、アルファイド氏はサッカーのフラムFCを買収し、知名度がさらに上がるなか、同年5月、「ヴァニティ・フェア」誌の親会社コンデ・ナスト社と和解に合意します。

8月末、ドディ氏とダイアナ元妃がパリで交通事故で亡くなると、「悲しみに打ちひしがれた父親」として人々の同情を誘いました。

アルファイド氏は2010年にハロッズを、13年にはフラムFCを巨額で売却します。

その前後にはアルファイド氏の性加害について元従業員らがメディアに話し、これが記事化されるあるいは番組化されたことがあります。ロンドン警視庁が検察に数回、相談したそうですが、訴追には至りませんでした。

「親がどこに住んでいるか知っているぞ」

BBCによると、元従業員らがアルファイド氏の加害行為を生前に告発することができなかったのは、解雇を恐れ、同氏の影響力の大きさにちゅうちょしたからでした。そして、最も大きな要素は恐怖心でした。「電話を盗聴している」と告げられ、ほかの女性たちと被害について話すことははばかられました。

「ヴァニティ・フェア」誌に体験を語った女性はアルファイドの警備員から電話をもらい、女性がもしメディアに暴露を続けるなら、「親がどこに住んでいるか、こちらは知っている」と言われ、凍り付くような思いをしたそうです。

ハロッズはアルファイド氏からカタール投資庁に売却されています。新所有者は昨年7月から、犠牲者として申し出た人に補償金を支払ってきましたが、BBCの番組放送後、新たに声を上げる元従業員が続々と出てきました。

ハロッズはBBCに対し、10月中旬時点で約250人の元女性従業員と補償の話を進めていると述べています。旧ハロッズで加害行為に協力した人物の責任が問われるべきではないでしょうか。当時のことを知っていた人、見て見ぬふりをしていた人がたくさんいたのではないでしょうか。