空挺部隊の勇姿を見たことがあるだろうか。轟音が響く輸送機に、すし詰め状態の兵士たち。皆、押し黙っている。突如、鬼軍曹の喚起で一斉に起立。もう、後戻りはできない。すべては訓練通りに行動するのみ。“Go! Go! Go! Go!” 上官の掛け声とともに凄まじい暴風の中、地上に向かってダイブしてゆく迷彩服の男たち――。

 だが、そんな心身ともに屈強な彼らだって心の片隅をよぎる想いがあるはずだ。「もし、万が一、パラシュートが開かなかったら……」と。残念ながら、事故は時折報告される。ところが、2021年7月に起きたトラブルは「奇跡」としか呼びようがない結末となった。

■パラシュートが開かず高度4600メートルから落下

 2021年7月6日。米カルフォルニア州アタスカデロの某私有地では、英国陸軍特殊部隊(SAS)がパラシュート降下による敵地潜入テクニック、高高度降下低高度傘開(HALO)の演習真っ最中だった。

 全英から集結したトップ・オブ・トップの隊員たちが、決死の覚悟で、次々と輸送機から躍り出る。少しでも怖気づいたら、うまくジャンプできず機体にぶつかったり、最悪の事態を招くことさえある。命がいくつあっても足りないデンジャラス・ゾーンだ。

 しかし同日午後4時55分。恐れていたアクシデントが発生してしまう。空中で、兵士Aのパラシュートが全開しないのだ! Aは高度1万5000フィート(4572メートル)から真っ逆さまに落下!

パラシュートが開かず高度4500mから墜落しても生還した男!響く爆音、茫然自失… 「奇跡としか言いようがない」
(画像=画像は「Unsplash」より,『TOCANA』より 引用)

 まさに、絶体絶命――。

 だが、運命は彼に味方した。なんと、民家に墜落したことで断熱材や屋根材がクッションとなって軽傷で済んだというのだ。 地元テレビ局KSBYによると、激突したのはヴィア・シエロ通り9500番地にある1軒家。墜落直前、近隣住民は「空からパラシュートがクルクル回りながら落ちてくる」光景を目撃し、直後にものすごい爆音がしたため、何が起こったのかと、この家に駆けつけたという。幸運にも、隣家のローズ・マーティンさんは看護師だった。

パラシュートが開かず高度4500mから墜落しても生還した男!響く爆音、茫然自失… 「奇跡としか言いようがない」
(画像=「KSBY」の記事より,『TOCANA』より 引用)

「確認したところ、目は開いていたんですが、怪我の程度まではわかりませんでした。とにかく、彼をむやみに動かさないようにしたんです」(ローズ・マーティンさん)

 現場の写真には、家の瓦屋根に穴が開き、瓦礫に囲まれたキッチンにSASの制服を着た兵士が、うずくまっている姿が確認できる。その後、無事に病院に運ばれ、治療を受けられたという。地元アタカデロ警察も「落下傘兵の意識はあるものの、痛みで茫然自失状態。目に見える深刻な怪我もない」と発表している。

パラシュートが開かず高度4500mから墜落しても生還した男!響く爆音、茫然自失… 「奇跡としか言いようがない」
(画像=画像は「METRO」より引用,『TOCANA』より 引用)

 家主の母親であるリンダ・サラディさんは「家の中は、それほど大きな被害はありませんでした。天井と石膏ボードが壊れただけ。カウンターや家電製品、他のすべてをすり抜けて着地したんです」と驚きを隠せない。また、事故のあった時間帯は留守で、そのため怪我人もなかったそうだ。

「奇跡としか言いようがありません。パラシュートなしであんな着地して、生きてる人がいるでしょうか」(ローズ・マーティンさん)

 ソフトランディングとはお世辞にも言えないけれど、神の御加護があったのかもしれない。

文=佐藤Kay

提供元・TOCANA

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