船舶と航空機が数多く消失している魔の海域“バミューダ・トライアングル”は有名だが、空にも魔の空域がある。それが米ネバダ州の“ネバダ・トライアングル”だ。
■ベテランパイロットが行方不明に
あの“エリア51”を擁するがために何かと疑惑の多い米・ネバダ州だが、この地には過去60年間で2000機もの航空機が墜落している魔の空域“ネバダ・トライアングル”も存在している。
ネバダ・トライアングルはカリフォルニア州とネバダ州をまたぐシエラネバダ山脈を含む砂漠地帯にあり、カリフォルニアのフレズノ近郊、ネバダ州のリノ近郊、ラスベガス近郊の3点を結ぶ三角地帯である。面積は約6万4750平方キロメートルあり、イングランドの面積の半分という広大な地帯だ。このネバダ・トライアングルには世界遺産のヨセミテ国立公園やデスバレーもあり、あの“エリア51”も含まれている。
2010年にイギリスの公共テレビ局「Channel 4」で放送されたドキュメンタリー番組によれば、このネバダ・トライアングルで過去60年に2000機もの航空機が墜落したと考えられていて、数百人のパイロットが行方不明になっている恐るべき空域であることを報告している。
航空機の消失事故として最も有名なのは、2007年に億万長者のアメリカ人冒険家、スティーヴ・フォセット氏が行方不明になった事故である。
金融業でひと財産を築き上げたフォセット氏は、冒険家として大空を舞台にさまざまな挑戦を行い、気球による単独世界一周や単発ジェット機による世界初の無給油単独世界一周など、計87の航空世界記録を樹立している空のスペシャリストであった。
ネバダ州西部に個人飛行場を所有していたフォセット氏は周辺の飛行には慣れていたはずだったが、2007年9月3日に小型機で飛び立ち、このネバダ・トライアングルの空域で行方不明となった。ベテランパイロットが行方不明になったとして世の注目を集め、一方で第二次大戦後で最大の捜索体制が敷かれた懸命の捜索も虚しく、遺体も機体も発見されないまま1年ほどが経過している。この間、フォセット氏の機体ではない墜落した航空機が8機も発見されたということだ。
フォセット氏の行方不明から1年が過ぎた2008年10月1日、飛行場から100キロほど離れた地点でフォセット氏が乗っていた機体の残骸の一部と身分証明書が発見され、加えて2本の白骨が見つかりDNA鑑定をしたところフォセット氏であることが確認された。フォセット氏が操縦していた機体はシエラネバダ山脈の山肌に激突したものと考えられている。周辺の空に慣れていたはずのフォセット氏の身にいったい何が起きたのだろうか。