11月26日に石川県で発生した地震の影響で北陸新幹線(JR西日本)が一時、運転を見合わせ、約4時間の遅れが発生。一部の列車が27日午前3時頃に富山駅に到着したが、乗客とみられるX(旧Twitter)ユーザーが「深夜3時に富山駅で放り出されました」とポストし、なぜ乗客は「現地解散」注目されている。不測の事態によるダイヤの乱れで到着が深夜になったり、途中駅で停車して朝まで足止めとなった場合にしばしばみられる「列車ホテル」のような対応は、なぜ取られなかったのか。専門家の見解を交えて追ってみたい。
地震が発生したのは11月26日の夜、午後10時47分頃。石川県西方沖を震源とするマグニチュード6.46、最大震度5弱の地震で、敦賀駅(福井県)から富山駅(富山県)に向かっていた「つるぎ48号」が、線路に被害が生じていないかを確認するため一時的に停止し、約4時間の遅れが発生。これにより、富山県に到着したのが深夜、翌27日の午前3時頃になった。
この列車に乗っていたとみられる人物は27日の未明、午前3時2分を指す時計が写り込んだ新幹線ホームや無人と化した富山駅構内の様子を収めた写真とともに、X上へ次のようにポスト。
<新幹線動いたと思ったら深夜3時に富山駅で放り出されました 列車ホテルなし JR西日本の企業体質どうなってんの?>
<富山駅で北陸新幹線4時間遅れから締め出されて野宿確定>
乗客は富山駅で列車から降ろされて新幹線乗り場からも退場させられ、滑川や魚津へ自費でタクシーで帰る人もいたが、この投稿者は学生のため駅で野宿することになったという。停車する列車内に朝まで滞在することを許可する、いわゆる「列車ホテル」のような対応は行われず、駅員からは料金の払い戻しはするものの即日の払い戻しはしないと説明され、東京に帰るため払い戻しを受けられない可能性があると訴えたが聞き入れられなかったという。
ちなみに、新幹線や特急列車が2時間遅延したときに払いもどされる特急料金の払戻期間は遅延した日の翌日から1年間となっているので、もともと払いもどされない。また、全国のJRの駅の窓口で払いもどしは受け付けている。
Business JournalはJR西日本に、朝まで停車する車両内に乗客が滞在することを許可するといった対応を取らなかった理由について聞いたところ、以下の回答が寄せられた。
「このたびは11月26日に発生した石川県能登地方を震源とする地震の影響により、ご利用のお客様には大変ご迷惑をおかけいたしまして誠に申し訳ございません。弊社といたしましては、未明に運転再開した新幹線から降りられたお客様に非常食と水を提供し、お帰りになるお客様のためにタクシー会社へ協力要請をするなど、当日できるかぎりの対応を実施しております。しかしながら今回の事象を真摯に受け止め、ご利用のすべてのお客様ご満足いただけるよう寄り添った対応に努めてまいります。今後ともJR西日本をよろしくお願い申し上げます」
「列車ホテル」を実施できなかった事情
今回の事例でJR西日本がとった対応は、鉄道会社のものとしては一般的なのか。鉄道ジャーナリストの梅原淳氏はいう。
「このようなケースでは、駅に停車させた車両や駅の待合所を朝まで開放して、乗客に利用させるという対応が一般的です。たとえば東海道新幹線が深夜に定刻より大きく遅れて東京駅に到着した場合、すぐ近くに大井車両基地があるため、朝まで列車ホテルとして車両を停車させ、早朝に回送で車庫に移動させたり、他の代替車両を手配することで翌朝の便に影響が出ないようにすることが可能となります。
一方、富山駅は近くに車庫がなく、深夜に到着した車両を朝まで列車ホテルとして使うと、もしその車両を金沢駅や敦賀駅に移動させて翌朝の便で使用する予定であった場合、運休などの影響が生じて他の多くの利用者に迷惑がかかってしまう可能性があります。よって、そのような事情で列車ホテルを用意できなかったのかもしれません。また、もともと夜の遅い時間帯に富山駅に到着予定の便であったのなら、自家用車を駐車場に停めていた地元の人や、富山市内に宿を予約している人なども一定数いたでしょうから、駅で足止めを余儀なくされた乗客がどれだけの数いたのか、ということにもよるでしょう」
夜の時間帯に不測の事態が起きたことが原因で乗客が「現地解散」の憂き目をみるというケースはしばしばある。たとえば、今年8月9日夜8時前に神奈川県西部を震源とする地震が起き、運転を見合わせた小田急線の小田原線の渋沢駅~新松田駅間では、乗務員の指示で乗客が降ろされ、誘導に従い線路・鉄橋上を歩行して深夜に山中の踏切に着くと、そこからは自力で帰宅するように言われて「現地解散」となった。乗客が乗務員に交渉した結果、電車内での待機を許されたとのことだが、指示に従って徒歩で自力で帰宅する乗客もいたという。この対応について小田急電鉄は次のように説明していた。
<(地震計で地表加速度)100ガル以上の場合は、線路・電路設備等の損傷から、最悪の事態では脱線・転覆までが想定されるため地震計ごとに設定する範囲で徒歩点検(150ガル以上の場合は、さらに試運転列車による確認も行います)を完了するまで、列車の運転を行いません
これにより、駅間に列車が停車した場合の対応については、運転再開までに30分以上を要する見込み、もしくは再開時刻の目途がたたない状況であれば、すべてのお客さまを対象に降車のご案内をすることを原則としています(この降車案内については、関東運輸局からの通達によるものです)また、駅間での降車後については、線路敷地内の足元の悪さから、お客さまに転倒等のリスクが伴うため、列車から最寄りの駅もしくは踏切から、線路敷地外へご案内させていただくことを原則としています>(8月20日付当サイト記事より)
(文=Business Journal編集部、協力=梅原淳/鉄道ジャーナリスト)
提供元・Business Journal
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