ジャガーらしい伝統的な一面も垣間見せつつ
先ごろ新ロゴを発表するなどブランドの再構築を目指しているジャガーだが、新しいジャガーのイメージを具現化したデザインビジョン・コンセプト「TYPE 00(タイプ ゼロゼロ)」が世界初公開された。
このタイプ 00の発表は新たなロゴの公開時に予告されていたもので、12月2日から6日間にわたりアメリカ・南フロリダで開催中のイベント「マイアミ・アートウィーク」においてデビューしたもの。創業者ウィリアム・ライオンズ卿の信念「Copy Nothing」に立ち戻ったものであり、かつ今後の展開を示唆するものだという。
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ジャガーは1961年のジュネーブモーターショーで「E-タイプ」を2台発表したが、その時と同じようにタイプ00も対照的な2台が披露された。ひとつは、「サテンロードンローズ」という色を纏ったモデルで、マイアミに多くみられるアールデコ建築のパステルカラーにちなんで「マイアミピンク」と呼ばれる。これは、真鍮が経年変化し独特なローズカラーになることからインスピレーションを得たものとのこと。
もうひとつは「インセプションシルバーブルー」。「ロンドンブルー」と呼ばれるこのカラーは、1960年代のオパールセントシルバーブルーに着想を得たもので、ブランドのルーツである英国のイメージを反映しているという。
ジャガー・ランドローバー最高経営責任者(CEO)エイドリアン・マーデル氏は以下のようにコメントしている。 「人々を魅了するジャガーの魔法のような力は私にとってとても大切でかけがえのないものです。ヘリテージや、芸術性、そしてエモーショナルな魅力をもち、比類のないオリジナルのブリティッシュ・ラグジュアリー・ブランドでした。それこそが私たちが目指すジャガーであり、『E-タイプ』のようなアイコニックなモデルと同じような感動を生み出したいと思っております。
私たちの変革の旅は、『Copy Nothing』というジャガー本来の信念に導かれてスタートを切りましたが、その結果はすばらしいものになると確信しています」
目指したのは最高レベルの芸術作品
このたび発表されたタイプ 00は、ジャガーの新たなクリエイティブな哲学「Exuberant Modernism(活気あふれるモダニズム)」を体現したというモデル。名称の「タイプ(TYPE)」は「E-タイプ」などの過去のモデルに由来、ひとつ目のゼロは「排出ガスゼロ」、ふたつ目のゼロは「新生ジャガーにとってのゼロ号車両」を表すとのこと。
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長いボンネットやなだらかなルーフラインからなるファストバックのプロファイルとボートテール、23インチのアロイホイールなどが、斬新ながらもジャガーらしいシルエットを生み出しているが、このデザインは、独自の専用アーキテクチャであるJEA(Jaguar Electrical Architecture)によって実現したものだという。
チーフ・クリエイティブ・オフィサーであるプロフェッサー・ジェリー・マクガバン氏のコメントは以下の通り。 「タイプ 00は、ジャガーの新しいクリエイティブな哲学をピュアに表現したものであり、際立った存在感を放ちます。これは、勇敢で制約のない創造的思考と揺るぎない決意の結果と言えます。私たちが最初に具現化し、これまでに見たことのないような外観をもち、新しいジャガーファミリーの礎石となるでしょう。まさに、最高レベルの芸術作品を目指したビジョンなのです」
エクステリアもインテリアもドラマチック
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フロントマスクは、垂直なフラッシュサーフェスに新しいデバイスマークを組み合わせたデザインを採用。ジャガーらしいプロポーションを見せるボディサイド両側には手仕上げの真鍮インゴットを備えるが、これは格納式のリアビューカメラとなっている。
最も大胆な演出と言えるのはリアビューで、テールゲートにはウィンドウが設けられていない。また、テールライトはフルワイドとなるが、水平のグラフィックによるリアエレベーションに隠されている。同様にルーフもグラスルーフとなっているが、これもボディと調和するかたちとなって目立たない。
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バタフライ式ドアとテールゲートを開けると現れる室内には、手仕上げの真鍮のライン3本が前後に渡されており、中央の1本が室内をフローティングインストルメントパネルまで分割する。楕円形のステアリングホイールも特徴的だ。
ジャガー担当チーフ・インテリア・デザイナーのトム・ホールデン氏は次のように説明する。 「エクステリアと同様に、可動式のテクノロジーがインテリアも特徴的です。ダッシュボードからスクリーンが静かに、そしてドラマチックに現れ、収納スペースは必要に応じて電動で静かにスライドして開き、隠れていた鮮やかな色彩のアクセントが見えてきます。(中略)Clearsightディスプレイは従来のバックミラーにとって代わり、全体的な視認性を向上させます」
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感覚的なエクスペリエンス
乗員は独自のプリズムケースを使用することで、気分に合わせて室内をカスタマイズできる……とのことだが、このプリズムケースは、ボディサイドの電動ドアつきボックスのなかに収納されており、真鍮、トラバーチン、アラバスターの3つの天然素材のトーテムからなる。センターコンソール内にトーテムのひとつを配置すると、インテリアの雰囲気を調整することができるという仕組みだ。
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アンビエントライトや独自のサウンドスケープ、スクリーングラフィックまで全てが、選択したトーテム素材の特性を反映したものになり、これまでにないパーソナライゼーションが実現するという。
今後の具体的な動きは如何?
このタイプ00はあくまでコンセプトモデルであり、最初のプロダクションモデルは4ドアGTとなる予定で、発表は2025年後半とアナウンスされている。1回の充電で、WLTPモードで770km(478マイル)、 EPAモードで692km(430マイル)の最大航続距離、さらに15分で最大321km(200マイル)分の急速充電の実現が目標とのこと。
またジャガーでは、世界中のカスタマー向けに、エクスクルーシブなブランドストアを展開する予定であり、それらはジャガーの世界に没入でき、かつ環境やその土地の文化を取り入れた空間になるという。「より広範なラグジュアリーリテイラーのグローバルネットワークを通じて、一層充実したエクスペリエンスを提供します」とのことだ。その第一弾はパリの高級ファッション地区の中心である8区にオープンが予定されている。
文・LE VOLANT web編集部/提供元・CARSMEET WEB
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