本書『世界のニュースを日本人は何も知らない6』(ワニブックス)は、アゴラでもおなじみの谷本真由美氏が20年以上にわたる海外経験を活かし、日本ではあまり知られていない海外事情やニュースを紹介するシリーズの第6弾である。

インターネットベンチャーや国連機関、外資系金融機関などでの勤務経験を持つ著者は、アフガニスタンやアフリカ南部などを含むさまざまな国での仕事や留学を通じて培った広い視野から、欧州の「保守系と極右の台頭」や中国の「月光族」と呼ばれる若者たちの消費文化や若年層の失業率の深刻さなどを取り上げている。

インバウンド観光客の実態に関する記述も興味深い。日本を訪れる観光客の振る舞いから、日本社会の受け入れ体制や異文化理解のあり方について分析する著者の視点は非常に考えさせられる。

また、著者は日本のメディアがユーモアやオリジナリティに欠け、世界の重要なニュースを十分に伝えられていない問題点を指摘しいている。その理由として、記者たちの経験不足や視野の狭さがあげられている。

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一方で、現在の日本のポジティブな部分として、日本の経済や文化が国際的に評価されつつある点が取り上げられている点も強調したい。例えば、東京オリンピックの成功がパリ大会との比較で日本の評価を高めたことや、ハイブリッド車が再び注目されていることなどである。とくに、日本の文化やコンテンツが世界的に注目されていることは、頼もしいことである。ある分野では、日本が国際社会で果たしている役割やポテンシャルを再確認できる。

本書は単に海外のニュースを伝えるだけでなく、著者の個人的な体験と幅広い知識に裏打ちされた深い洞察が込められていると言える。とくに著者が提案する「異文化体験の重要性」は、日本の社会や個人がグローバル化に適応するためのヒントとなる。

日本人が海外の出来事や異文化に触れることで得られる驚きや気づきの大切さを訴えつつ、それらを日常生活や仕事に活かすことができるようにするヒントがちりばめられている。2025年に向けて『世界のニュースを日本人は何も知らない6』をぜひ紐解いてほしい。