揚水や蓄電池を活用すれば再生可能エネルギーを拡大できるのか
揚水や蓄電池は有効な調整力であるが、あらかじめ充電した量しか利用することができず、持続時間に制約があるなど火力機と比較して使い勝手に大きな差がある。
季節間の変動や、曇りで風が弱い日が続いたときなど、揚水・蓄電池だけでは対応しきれない。
また、最近ではこれらを「脱炭素化された調整力」と表現されているが、現状再エネが余剰となる時間帯はわずかであり、年間を通してみるとこれらの充電原資は主に火力発電が担っているため無条件で脱炭素電源と言えるわけではない。
将来的に蓄電池が大量に普及し、余剰再エネで十分な電力を充電できるようになれば、調整力としての火力など不要との意見もあるが、昼間しか発電せず、年間の利用率が17%程度の太陽光発電で必要な電力量を賄うためには、今の10倍程度の設備量が必要となる。
また、限られた時間帯で発生する大量の余剰電力を、夜間や曇り日の分も含めてせっせと充電しなければならず、貯め込む量に比例して蓄電池の設備量も莫大なものとなる。さらに、充電には少なからずロスを伴うことも考慮すると、すべての電力を蓄電池に貯めることには相当な無理がある。
さらに、もし再エネと蓄電池の組合せにより電力供給を賄おうとすれば、再エネ余剰が十二分にあることが前提となるが、再エネ、蓄電池ともに莫大な設備費がかかることに加え、再エネを増やそうとすると、先ず調整力が不足し、そのことが安定供給維持の障害となるというジレンマを抱えている。
送電線、揚水発電所、蓄電池、さらにはデマンドレスポンスについても、それぞれの特性を正しく理解し、使いどころをしっかり見極めることがなにより重要だ。
(次回につづく)
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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