PCは「メンテナンスせずに安全に使い続けられる」ものではない
社員用PCなどにWindows 10を使っている企業は、急いでWindows 11への移行を進めたほうがよいのか。もしくは、それほど急ぐ必要はないのか。前出・西田氏はいう。
「急ぐべき。というより、Windows 11の登場からすでに3年が経過しており、その時からずっと『移行すべき』とされているのに、『何もしていない』『あと1年しかない』と言うのは、そもそもおかしい。移行はいつか必須になることであり、『さらに伸ばす』ことを前提で語るべきではないし、急に出てきたものでもない。これはWindows 11でどうこうということではなく、過去のWindowsでも同様に起きていた。世界的には計画的移行が当たり前になっているのに、ギリギリまで待って騒ぎ始めるのは日本の悪癖。
OSの刷新は新機能の有無だけでなく『一定期間PCを安全に使うための基盤』として考えるべきもの。長く使い続けることによるリスクとコストを勘案すれば、新OS投入から3年ほどの間のどこかで更新計画をたて、ハードウェアと共に入れ替えていくのが望ましい。PCは『メンテナンスせずに安全に使い続けられる』ものではない」
仮にサポートが切れた後もWindows 10を使用し続けていると、リスクやデメリットは大きいのか。
「セキュリティ対策上、非常に大きなリスクがある。古いOSは攻撃に晒される可能性も高くなるので、まずはそのデメリットを考える必要がある。OS基盤はその時のセキュリティ事情やハードウェアのトレンドを加味して開発されており、古くなるとリスクは大きくなる。マイクロソフトなどのOSベンダがOSを刷新するのは、ビジネス上の理由も大きいが、セキュリティ上のリスクを含め、必要な基盤を用意するためでもある。
ただし、企業側で移行に時間がかかることは、マイクロソフト側でも想定されている。ESUという仕組みが用意されている。これを契約すると、Windows 10のままセキュリティサポートなどを受けられるため、時間を稼ぐことも可能。ただし、ESUの利用には費用を伴った契約が必要であり、『移行しないでコストを抑える』ためのものではない。また、Windows 10のサポート終了から時間が経てば経つほどESUにかかるコストも高くなるので、結局、移行したほうが有利であるのは間違いない。ESUは個人向けのPCにも用意されるが、同様に費用がかさんでいく」
(文=Business Journal編集部、協力=西田宗千佳/ITジャーナリスト)
提供元・Business Journal
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