フリマアプリ「メルカリ」で出品者が購入者からの返品要求に応じたところ、ゴミや安価な物を送りつけられたり、購入者からの返品要求にメルカリ事務局が一方的に応じて、購入者が返品をせずに出品者が物品を事実上盗まれてしまうという「返品詐欺」問題。被害を訴えるユーザーに対して事務局が一方的な返答を行い、ユーザーの説明を聞き入れないなどの対応に批判が広まったことを受け、メルカリは先月25日、ユーザーへのサポート体制を強化すると声明を発表。だが、声明発表後も同様の被害に遭ったという報告がSNS上にあがっている。専門家は「メルカリの利用基準や規制が緩すぎるのが原因であり、被害を完全になくすことは難しい」「メルカリで高額商品を出品するのはナンセンス」と指摘する。

 昨年頃から、メルカリで返品の悪用によるトラブルが相次いでいる。たとえば、少し前にはこんな事例がSNS上で注目を集めた。出品者が88万円の商品を売り、購入者による「受取評価」も完了して取引完了になった後、1週間ほど経過したタイミングで購入者から「偽物であるため返品したい」という連絡が寄せられ、偽物であると主張する根拠が示されないため拒否。するとメルカリ事務局から連絡があり、返品要求に応じて代金を返金するよう求められ、偽物であると主張する根拠を確認するため購入者と話し合いを続ける意向を伝えたが、売上金を事務局によって「お預かり」された上に強制的に返品・返金処理を進められ、購入者から返品されないままメルカリから強制退会させられたという。

 同様の事例が相次ぎ、メルカリ事務局への批判が広まったことから、メルカリは先月25日、「お客さまサポートの体制強化と新たな補償方針について」と題するリリースを発表。具体的には以下に取り組むと説明した。

(1)お客さまサポートの体制の強化
 ・お客さま間で解決が難しい問題に、より関与し早期解決
 ・お取引の経緯や過去のご利用状況の確認の徹底
 ・商品回収センターの新規開設
  -すり替え・模倣品などの商品回収
  -商品画像・説明などと商品実物の照合・調査
(2)お客さまへの補償の拡大
 ・正しくご利用いただいているお客さまへの補償
 ・商品実物の回収・目視確認の実施
 ・本人確認(eKYCなど)やシステム化による不正な補償受け取りなどへの対応

(3)不正利用者の排除
 ・本人確認の対象の拡大
 ・関係当局や警察などとの連携強化
 ・不正行為が疑われる取引監視の徹底
 ・不正行為を検知するためのAIシステムなどの構築(予定)
 ・アカウント通報機能の強化(予定)

対策の有効性に疑問も

 だが、その後も返品詐欺とみられる行為の被害にあったという報告はあがっており、たとえば以下のX(旧Twitter)投稿が話題を呼んでいる。

<iPhoneとApple Watch(計18万)発送後、キャンセルされ返品したと言うが届かず。確認すると発送先の住所を間違えたとのこと。事務局に確認するも、元購入者と連絡が取れないのでもう諦めろとのこと>(一部、商品表記等を編集部にて修正)

 メルカリが発表した対策は、「返品詐欺」のような問題行為の排除に有効と考えられるか。ECサイトでの出品代行やコンサルティングなどを行う株式会社ネットショップ総研の幅貴道氏はいう。

「たとえばフリマアプリに近い『Yahoo!オークション(ヤフオク)』では購入者に対する制限が強く、過去の購入実績で一定の高さの評価を受けていないと新規の購入できないようになっています。また、『スニーカーダンク(スニダン)』や『StockX』は出品される商品の真贋を見極める専用スタッフを配置するなど、出品サイドを厳しく監視しています。これらと比べると、メルカリは出品者側・購入者側の両方に対する制限や規制が非常に緩いため、現在問題となっているようなトラブルが多発していると考えられます。

 返品詐欺のようなトラブルを減らすためには、過去の取引における評価などが一定の条件を満たさないと購入できないなど利用基準を強化するということになりますが、もともとメルカリは誰もが気軽に出品・購入できることをウリとして、それによってここまで普及したという経緯があり、それを大きく転換させるとユーザー離れが起きる可能性もあるため、非常にハードルは高いでしょう。

 個人間のCtoCで売買するという性質上、このような被害を完全になくすことは難しいと考えられますが、実はBtoCのアマゾンや楽天市場でも同様の問題は多発しています。アマゾンでは購入者は商品が到着してから一定期間以内であれば、ほぼ無条件といっていいくらい返品が可能になっており、購入者がむちゃくちゃな理由をつけて返品したり、わざと商品に傷をつけて返品し、販売事業者側が泣き寝入りを強いられるということが非常に多いです」

 では、ユーザーがトラブルに巻き込まれないためには、どうすべきか。

「返品詐欺のような犯罪をはたらこうと考える者が意図的に取引実績を重ねて評価を高めるというケースは、それほど多くないでしょうから、まずは相手の購入者の実績がなかったり少なかったりすれば、売らないということです。メッセージのやりとりのなかで失礼な言動などがあればブロックできるので、少しやりとりをしてみて相手に怪しい点がないかを確認してみてもよいでしょう。そして何より重要なことは、盗まれて困るような高額な物をメルカリで出品するのはナンセンスだと認識し、そのような物は出品しないということです。他のアプリや実店舗での売却を検討してもよいでしょう。

 一方、購入者側としては、検討の段階で出品者とのやりとりのなかで『商品のこの部分の画像を送ってください』などと、確認を入念に行うことです。前述した真贋を見極める専用スタッフをメルカリが置くといった施策は、大きな労力とコストがかかるため、導入は難しいと思われます。よって、自分で自分の身を守るためにしっかりとしたチェックを怠らないことが重要です」