ランドローバーがレンジローバー初のEVモデル「レンジローバー エレクトリック」プロトタイプ車両の新しい走行テスト画像と動画を披露。気温50度を超えるアラブ首長国連邦・ドバイでの高温環境テストを実施し、新しい熱管理システムの有効性を確認。砂漠における新開発のインテリジェント・トルクマネジメントシステムの走破能力も徹底テスト
英国ジャガー・ランドローバー(JLR)は2024年11月28日(現地時間)、レンジローバー初となるEVモデル「レンジローバー エレクトリック(RANGE ROVER ELECTRIC)」プロトタイプ車両のアラブ首長国連邦・ドバイにおける走行テスト画像および動画を公開した。

レンジローバー エレクトリックは、最新アーキテクチャーの「MLA-Flex(flexible Modular Longitudinal Architecture)」をベースに、レンジローバーの模範的なデザインを踏襲したうえで、息をのむようなモダニティを強調し、EVモデルであることを主張する繊細なデザインキューを採用する。また、史上最も静かで洗練されたレンジローバーを開発するという目標を掲げ、独自のアクティブロードノイズキャンセリングシステムやサウンドデザインなどを装備して、モダンラグジュアリーを体現するEVならではの極めて静穏で快適なキャビンの創出を目指している。
走行面においては、レンジローバーの特徴である高いオールテレイン走破能力の実現を志向し、極端な温度環境、あらゆる気候条件、どんな地形にも対応する走破能力、現行モデルと同等の水深850mmの渡河水深能力と牽引能力を確保すべく、プロトタイプを使って厳格なエンジニアリング・サインオフ・プログラムを進行中。これにはアンダーフロアやバッテリーの耐久性、シャシーの最適セッティング、優れた温度ディレーティングを実現するためのビークルダイナミクステストなどが含まれる。また、充電に関しては800Vのアーキテクチャーを採用して公共充電ネットワークでの急速充電に対応。合わせて、ユーザーには簡便な充電、エネルギー・パートナーシップとの連携、無線通信でのソフトウェアのアップデートが可能なSoftware-Over-The-Air(SOTA)、航続距離を最大化するインテリジェントなテクノロジーなど、シームレスなEVエクスペリエンスを提供する予定だ。

今回の発表では、ブラックのボディカラーを纏ったプロトタイプ車両の、アラブ首長国連邦・ドバイにおける走行テスト風景を披露。気温50度、湿度90%とい過酷な環境下での熱管理システムのテストや、砂漠におけるパフォーマンスを確認する。
熱管理においては、ダイナミックな砂漠の坂道から、太陽が照りつける市街地までを走行し、システムを徹底検証。そして、既存のレンジローバーの熱テストで記録したパフォーマンスを上回る優れた効率性を確認し、さらに長時間にわたる集中的な砂漠での走行においても模範的な熱性能が継続的に維持されることを実証した。

一方で走破性については、ホイールのスリップ管理タスクを各電動駆動制御ユニットに直接分配し、各ホイールのトルク反応時間を約100ミリ秒からわずか1ミリ秒に短縮した新しいインテリジェント・トルクマネジメントシステムによって、細かい砂の上を走行する際のトラクションコントロールの向上を確認。また、バランスの取れた重量配分と高度なサスペンションシステムによって、砂地においても高いコントロールと安定性を容易に維持することを見定めた。ちなみに、現地のシャルジャのアル・バダイヤー砂漠の中心には“ビッグ・レッド”と称するサフラン色の砂丘がそびえ立っており、レンジローバーは次のテスト段階に進む前に、パフォーマンスを落とさずに5回登り切ることをテスト条件に課しているが、レンジローバー エレクトリックのプロトタイプ車両は見事にこのテストをクリアしたという。

JLRのプロダクトエンジニアリング担当エグゼクティブディレターであるトーマス・ミュラー氏は、「暑い気候は、バッテリー電気自動車(BEV)にとって最も困難な環境のひとつと言えます。車内を冷却すると同時に、バッテリー性能を最適化する必要があるからです。砂地を走行する際には、低速トルクをコントロールする必要があります。そこで、私たちが特別に開発したトラクションコントロールと熱管理システムが連携して機能し、電力供給に影響しないようにします。このような気候のなか、100メートルに相当する細かい砂の上り坂を繰り返し走行しましたが、レンジローバー エレクトリックは内燃機関(ICE)と同等のパフォーマンスを発揮することが、今回のテストによって証明されました。また、場合によっては新機能の導入により、それらを上回ることさえあります」とコメントしている。

なお、レンジローバー エレクトリックは英国のソリハル工場で生産。バッテリーおよびエレクトリックドライブユニット(EDU)に関しては、英国ウルヴァーハンプトンにあるJLRの新しいエレクトリック・プロパルション・マニュファクチャリングセンターで組み立てる。市販モデルの予約受注は、当初からやや遅れて2025年に開始する予定だ。

提供元・CAR and DRIVER
【関連記事】
・「新世代日産」e-POWER搭載の代表2モデル。新型ノートとキックス、トータルではどうなのか
・最近よく見かける新型メルセデスGクラス、その本命G350dの気になるパワフルフィール
・コンパクトSUV特集:全長3995mm/小さくて安い。最近、良く見かけるトヨタ・ライズに乗ってみた
・2020年の国内新車販売で10万台以上を達成した7モデルとは何か
・Jeepグランドチェロキー初の3列シート仕様が米国デビュ