“文句”を言わない妻なんていない――。

妻にしてみれば、共働きで子育てもしている上に家計管理まで押し付けられていれば、文句の一つも言いたくなるだろう。「いや、俺は残業続きでそんな時間はない」という男性も多かろうが、そう言って妻が分かってくれるなら、不満なんてそもそも生じない。

文句を最小限に抑えるには、妻のストレスを軽減する必要がある。そのためには夫婦ともども手をかけず簡単に家計を管理する方法を導入すればいいのだ。

夫婦の情報共有で明瞭会計

ワンオペがストレスなのは子育てに限らない。家計管理も同じである。丸っきりどちらかに任せてしまうのはよくない。

だからといって、家計簿なんてつける時間はないだろう。家計管理を共働き夫婦で共同でやるときに肝心なのは、情報共有と得意分野を分担することだ。

共有すべき内容は「ライフプランに沿った貯蓄目標」「貯蓄の仕方と管理方法」「定期的なイベント」。

ライフプランを作成し、ライフイベントごとにかかる費用の見積もりができていれば貯蓄目標は立てやすい。それを共有することで目標へ向かうモチベーションも保たれ、妻のストレスは軽減するだろう。

そして目的ごとにどうやって貯めるかを決め、どちらが管理するのかを決めておく。基本的に女性は長期節約志向であり、男性は短期決戦で運用志向と言っていいだろう。得意分野で役割設定をしておけば、ストレスはさらに軽減する。

お互いに忙しい毎日を過ごすには、“オアシス”も必要である。定期的に家族や個々で楽しめるイベントを決めイベント預金として別管理することで、躊躇なく楽しめる上に日々のストレスは限りなくゼロに近づくはずだ。

家計の状況が可視化される便利ツールの活用

目標ごとに設定した口座は、夫婦の共有口座が望ましい。役割を決めていたとしても状況が見えなければ意味がないからだ。お勧めは保有口座や運用状況が一括管理でき、スマホでも確認できるアプリを活用することである。状況の可視化が基本であることは、ビジネスでも家計管理でも同じだ。

アプリ・ツール選びで重視したいのは次の3点だ。

(1) 夫婦がそれぞれのスマホで同時・共同管理できる
(2) 銀行口座だけでなく資産運用状況に関しても連携している
(3) セキュリティが万全である

ちなみに総合家計管理アプリのランキングで上位なのは、マネーフォワード、Zaim(ザイム)、MoneyTree(マネーツリー)などである。

既にご存じのアプリばかりかもしれないが、それぞれの特徴を確認しながら自分達にあったアプリを夫婦で選ぶといいだろう。

お金が勝手に貯まる家計の仕組み作り

目標や管理方法の共有とツールの選定が済んだら、ストレスなく貯められる仕組みづくりを目指したい。

毎月それぞれの口座に給与が振り込まれたら、生活費口座と目的ごとに作成した貯蓄用の口座に自動的に振り分けられるよう、定額入金サービスなどを利用して設定する。いちいちお金を引き出して入金するのではなく、自動化しておくことが重要。これで基本的な仕組みは完了だ。

生活費口座に関しては、デビットカードを利用してキャッシュレス決済することで履歴を簡単に残すこともできる。あえてクレジットカードではなくデビットカードにすることで、使い過ぎを避けられるメリットがある。

後はこの共有口座とアプリを連携し、定期的に確認することだ。さらには、最近徐々に注目されつつある「お釣り投資アプリ」を利用すれば、使ったつもりで毎月確実に運用に回すこともできる。

何より重要なのは、手間をかけずに勝手に資金が貯まる仕組みである。

個人口座には干渉しない

最後の詰めは、公平感と自由感を感じさせることである。共有口座にそれぞれ振り込む金額は、お互いの収入状況によって差別化し、妻に過度な負担を感じさせないことだ。

働く2人にとっては、ある程度自由になるお小遣いも必要である。その金額もライフプランに応じて話し合えばいいが、プライベートな領域である個人口座に関してはお互いに干渉しないことも重要である。

文・高村浩子(ファイナンシャル・プランナー)
 

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