■鏡の人
私が12歳くらい頃の話で、夜中にオシッコに行きたくなり目を覚ましました。廊下を横切ってバスルームに入り、電気をつけて、ふと鏡に映る姿を見ると――私の顔ではありませんでした。
まるで誰かが向こう側にいて、右側に立って顔をガラスに押し付け、私をじっと見つめているかのようでした。恐怖のあまり一瞬しか見てないのですが、確実に脳裏に焼き付いてしまいました。
私は悲鳴を上げ、そこから逃げ出し父を探しました。もちろん、父は調べてくれて、大丈夫だよと私をなだめてくれました。私があまりにもパニック状態だったため、最後は祈りを捧げたくらいです。それで、再び眠りにつくことができました。
早いもので、私も30代になりました。あのおぞましい出来事はすっかり忘れてしまっていました。
ある晩、父を訪問した際、彼は静かにあのときの話を持ち出したのです。「なぁ、鏡で顔を見た時のことを覚えているか……」と。急に記憶がよみがえり、背筋が凍るような思いでした。「うん、覚えてるよ」。
「そうだな……」と父は言い、「あの夜のことを時々思い出すんだ」とつぶやきました。そして床に目を落とし、真剣な表情で「俺も見たんだ」と。
父は、私が見たものと寸分違わず描写してみせました。私たちは、それが「何」だったのか今でもわかりません。どうやら、父が鏡を調べた時、それと目が合ってしまい、自分でも恐ろしくなってしまったらしいのです。ですから、祈りの時間をもったのは、息子のためもあったけれど、自分自身の正気を保つためでもあったのでした。
私が30歳を過ぎるまで、この話を黙っていてくれた父を尊敬しています。けれど、できれば死ぬまで言わないでいてほしかったとも思っています。
提供元・TOCANA
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