日本放送協会(NHK)が11月19日に2024年4〜9月期決算を発表し、事業収入は前年同期比382億円減(11%減)の3083億円。特に受信料収入は同402億円減(12%減)の2958億円で、下げ幅は中間決算の公表を始めた2011年度以降で最大となった。2023年10月に受信料を引き下げた影響が大きいが、減収は5期連続にわたる。その一方で、事業支出はわずか3%減にとどまり、ほぼ横ばい。NHK局員によると、経費削減の動きはほとんどないという。
NHKが11月19日に発表した2024年4〜9月期決算によると、一般企業の売上高に当たる事業収入は前年同期比382億円減(11%減)の3083億円だった。34年ぶりに赤字決算となった昨年度を下回るペースとなっている。事業収入の中心は受信料で、昨年10月の値下げの影響が大きい。さらに、契約者数の減少および未払い者数の増加が深刻な影を落としている。受信契約総数は9月末時点で4080万件、衛星契約は2179万件となっており、それぞれ2019年の4522万件、2288万件から減り続けている。受信料の支払率は78%で、いわゆる未払いにあたる未収数は170万件近くに上っている。これは19年から倍以上の数である。
受信料の金額を引き下げ、契約者数は減り、未払い者は増加。収入が減少トレンドにある一方で、事業支出はわずか3%減。収入と支出のバランスが合っていないように見える。
だが、NHKである番組制作に携わるディレクターは、「今のところ大きな経費削減の動きはない」と明かす。
「もちろん、無駄な支出はなくすようにしていますが、民放が経費を削減している動きに比べて、NHKは番組の予算を大きく削るという感じではないですね。大型のセットが必要なドラマや、長期間のロケ、大人数が出演する番組の数が減った実感はほとんどありません。しかし、実は2020年以降、事業支出や番組制作費は計画的に減っているのです。つまり、視聴者はもちろん、働いている我々にとっても、制作費を切り詰めていると感じさせないように、徐々に削減しているといえます」
大幅にではないが、着実に支出は減っている
ほとんど減っていないように見えるNHKの支出だが、2024~26年度の中期経営計画では、27年度までに1000億円の支出削減を行う方針を明記している。そして支出削減を含む構造改革を実施し始めた21年度以降、設備投資費(建設費)を大幅に抑制している。番組制作費の削減はわずかだが、この設備投資の減少が大きい。
NHKは2021年度以降、毎年2~3%程度の番組制作費の削減を行っているが、“出すべきところでは出す”の方針が見て取れる。そのため視聴者からは、切り詰めているようには見えず、潤沢な予算のなかで制作されていると感じられるのだ。局員が「大幅な経費削減の動きはない」と語っているように、大胆なコストカットは行っていないが、支出削減の計画は毎年達成しており、計画的な削減をしていることが背景にある。
収入が減少の一途をたどっているなかで、大幅な経費削減を行わない理由は、ほかにもある。ひとつは、潤沢な資産だ。1兆2000億円に上る総資産と9000億円近い金融資産(現預金および有価証券)によって、多少の赤字は簡単に補填できる。また、受信契約数が減る傾向にあっても、インターネット利用者からの受信料徴収が見込めることも大きい。
今年5月に成立した改正放送法に基づき、テレビの地上波番組の同時配信、見逃し配信、さらに文字ニュースをはじめとする「番組関連情報」の配信が、放送と同等の必須業務となる。来年10月から、この新サービスが始まる予定で、テレビを持たない若い層を中心に、ネットのみでの利用者の契約が、初年度となる2025年度下半期だけで1万2000件、翌26年度には2万4000件に達するとNHKは推計している。
このネット配信の契約により、受信料収入減少トレンドに歯止めをかけられるのかは未知数だが、NHKは2024~26年度経営計画の修正案で、受信料収入の改善などにより25年度および26年度の事業収入が各100億円増えるとの見通しを立てている。これが民放との大きな違いを生む背景にあるといえる。
(文=Business Journal編集部)
提供元・Business Journal
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