交通事故で被害に遭った人たちの体験談がSNS上で広がりをみせている。話題の中心は、自動車、バイク、身体のケガなど、被害者が受けた損害に対し、保険会社が提示する補償額があまりに低すぎるというもので、納得のいく補償額を得るために、どのような交渉をしたのかを明かす体験談が続々と投稿されているのだ。「530万円の修理代に対して280万円の提示」「修理代が90万円なのに50万円と提示された」など、保険会社は極端ともいえるほど低い補償額を提示するのはなぜなのか。また、泣き寝入りしないために、どのように交渉すべきなのか、損害保険の関係者に話を聞いた。

 あるXユーザーが写真付きで、路上パーキングに停めていたマイカーにクルマをぶつけられて大きな損害が出たことを報告。かなり強く接触したようで、車体の損傷が激しい。とはいえ、このような事故自体は珍しくもない。SNSでこの投稿が注目されるようになったきっかけは、その後の報告にある。ぶつけた相手からはきちんと謝罪があったものの、認定工場での見積りで修理費は530万円だったが相手の保険会社から提示された金額が280万円だったという。

「ローンも完済できない。車はあの日からなくなる。買い替えも無理。民法では被害者と加害者を公平にするためとありますが公平ですか?これは」と嘆いている。この報告がこれまでに4000万回以上閲覧され、「弁護士特約を使いましょう」「保険屋は値切るのが仕事だからとことん交渉しよう」など多数のアドバイスや同情の声が寄せられている。

 また、「追突事故で自動車は廃車、頸椎損傷で麻痺ってるのに『全部コミコミで50万しか払わん!』と言ってきた、あの保険屋は絶対に許さん」「青信号の横断歩道を自転車で渡ってたら、よそ見して曲がって来た車に轢かれた時に、相手の保険屋が過失割合8:2ですって言われた」など、理不尽な保険会社の対応を報告する向きも続々と現れている。

 さらには、「バイクの他損で90万の修理費に対して相手方の保険屋が50万を提示してきたから『直さずこの額であんたらに売る』と言ったら満額払いになった」「うちの親父が自動車ぶつけられた時にやっぱり修理額に到底合わない査定額出されたから『では示談不成立ですね、相手方に直接見積書と請求書回すようにします』って言ったら、翌日に満額回答に変わった」といった、自身が経験した保険会社との交渉術を公開している人もいる。

損害保険の社員に話を聞いた

 なぜ保険会社は補償額を理不尽なほどに低く提示するのだろうか。自動車事故を専門に担当する、損害保険会社の社員に話を聞いた。

「『保険会社は値切るのが仕事』との書き込みをしている方がいますが、当たらずとも遠からずといえます。お金を多く払いたい会社などありませんから、まずは自社の顧客の過失割合がどの程度かを判断し、相手の損害を算定するわけですが、なるべく“最低限度”の出費に抑えられるように提示します。最初の提示額ですんなり交渉が終わることはほとんどないので、わざと低めに提示する慣習が、どの保険会社でもあると思います。また、相手方としては可能な限り多く保険金を出してもらおうとするので、相手が主張する損害が妥当なのか、本当に事故の影響で発生した損害なのかなど、自社で調査も行います。

 問題になることが多いのは、生産が終了した車種や販売台数が少ない車種など、プレミアが付いている自動車やバイクです。基本的に損害額の算定は時価で行うので、販売額から使用年数で減価償却するかたちでの計算です。すると、実際の市場価値やマニア間での取引価格とは大きなズレが生じます。しかし、保険会社の基本は低い金額での査定なので、必ず揉めますね。積荷などに希少価値の高い物品がある場合も、査定額で争いが起きます」

 保険会社は極力補償額を低く抑えたいというのはわかるが、事故の被害者側としては、最低でも損害をカバーしてほしいところだ。交渉のポイントはどこにあるのか。

「まずは、損害額を根拠ある資料とともに提示することが第一条件です。ドライブレコーダーは必須ですし、『このくらいの額をもらわないと合わない』とか『だいたいこの金額が妥当』という提示は、保険会社は受け入れません。また、自動車工場などの見積もりも、高めに出されることが珍しくないので、保険会社は提携している工場で独自に見積もりを取ることがあります。

 さらに、治療費についても、『むちうちで治療が長引く』など、確定金額を出さずに交渉を長引かせようとする人が多いので、保険会社はどこかで打ち切ろうとするのが常道です。

 つまり、補償額を少しでも高くしてほしいという要望はわかりますが、保険会社はそういう交渉を毎日してきているので、対応方法も多様に持っています。

 正当な補償を得るためには、弁護士特約を使って弁護士に交渉を依頼するのが無難だと思います。保険会社も弁護士相手に無茶な値切りはしないので、交渉が早く終わることにもつながります」

 ネット上にある交渉術などを使って交渉するよりも、弁護士に交渉を代行してもらうのが最善ということだ。最近は弁護士特約を付帯させても保険料は年間数千円しか変わらないという保険が増えている。自動車保険を更新する際には検討してみるといいだろう。

(文=Business Journal編集部)

提供元・Business Journal

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