マウリツィオ・サッリ監督 写真:Getty Images

 2021年から2024年までセリエAのラツィオの指揮官で日本代表MF鎌田大地(クリスタル・パレス)も指導したマウリツィオ・サッリ監督が、2018/19シーズンにわずか1シーズンでプレミアリーグのチェルシーを去った理由をUKメディアで明らかにした。その背景には、クラブ内部の混乱と個人的な判断が絡んでいたようだ。

 2018/19シーズン、サッリ監督が率いたチェルシーはプレミアリーグ3位、ヨーロッパリーグ(EL)優勝、カラバオカップ準優勝という結果を残したが、同監督は2019年夏にセリエAの強豪ユベントスへ移籍することを選んでいる。

 5年越しにこの退任の理由について、「当時のチェルシーの状況は非常に複雑だった」と『THE SUN』で語ったサッリ監督。「私は主に当時のクラブの取締役を務めていたマリーナ・グラノフスカイア氏とやり取りをしていたが、それ以外の支えはほとんどなかった」と振り返った。

 当時、クラブのオーナーであったロマン・アブラモビッチ氏はイギリス政府との関係が悪化し、ビザの更新が却下されてイギリスに入国できなくなっていた。そのため、サッリ監督がアブラモビッチ氏と直接会う機会は海外試合の際だけに限られ、通常のクラブ運営に必要な意思疎通が困難な状態にあった。加えて、クラブにはスポーツディレクターが不在で、方針やサポートが明確でない状況が続いていたという。

 また、チェルシーは当時、アカデミー選手に関する規定違反が問題視され、移籍禁止処分のリスクを抱えていた。これによりクラブ運営全体に不安定な要素が増し、サッリ監督は「内部の不透明さに不安を感じた」と述べている。

 さらに、家族の事情も彼の決断に影響を与えたようだ。グラノフスカイア氏は「サッリ監督は高齢の両親の健康を理由に、イタリアへ戻りたいという強い希望を示していた」と明かし、家族に近い環境での生活を求めていたことを示唆している。この結果、ユベントスがチェルシーに補償金を支払う形での移籍が実現したようだ。