■言葉を話すことなく結核で死亡

 サニチャーの世話人であったエルハルト神父は、サニチャーのすべての「進歩」を注意深く計画したが、彼はついに言葉を話すことは無かった。

 サニチャーは直立して歩くことができたが、四つん這いの方がはるかに上手く動けた。また困難ながらも身なりを整えることができ、自分のカップと皿から食べることができた。しかし彼は、食べる前には全ての食べ物の匂いを嗅ぎ、生肉以外のものを可能な限り避けた。彼はその後30年近くを、孤児院で過ごしたが、人間らしい様子はほとんど示さなかったという。

狼に育てられた少年の生涯 ― “死ぬまで野生動物だった”男が唯一受け入れた人間の習慣とは
(画像=「Wikimedia Commons」の記事より,『TOCANA』より 引用)

 唯一、彼が喜んで取り入れた人間の習慣は喫煙だった。彼はヘビースモーカーになり、1895年に36歳(推定)で結核で亡くなったといわれている。

 キップリングの名作「オオカミ少年」主人公のモーグリは、その時の男の子からインスピレーションを得たものとも言われる。

 インドでは、それまでにもヒョウ、鶏、犬、さらには鹿に「育てられた」野生の子供たちが発見されているという。これはおそらく親が養育放棄したり、ジャングルに捨てられた子供たちが、野生動物と生活を共にするようになったからだろう。

 サニチャーの場合は孤児院に引き取られ、周囲の人間が「人間化」を試みたが、残っている写真をみると洋服も無理やり着せられたようで、人間との生活は窮屈なことばかりだったかもしれない。もしサニチャーが言葉を話せたら、人間との生活とジャングルでのオオカミとの生活のどちらを選んだであろうか。

文=三橋ココ

提供元・TOCANA

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