紀元前3300年頃にはじまった青銅器時代は実は人類史において大きな可能性を孕んだ輝かしい時代であった。そのまま順調な発展を見せていれば今日の人類文明とはかなり違った先進文明が到来していたのかもしれないが、残念なことに繁栄を極めていた文明は紀元前1177年、謎の同時崩壊で終焉したのだ――。
■紀元前1177年に起きた「青銅器時代の崩壊」
今から3200年ほど前、人類はかつてない高みに到達していた。東地中海、北アフリカ、近東では、複雑で高度に組織化された文明が外交、貿易、交流を通じて相互に結びつきいていたのだ。文化は栄え、各地に大都市が出現した。
しかしその後、時を同じくしてすべてが崩壊した。その理由は今もよくわかっていない。
紀元前3300年頃に始まった青銅器時代は、銅を精錬し、スズ、ヒ素、またはその他の金属と合金にして作られた青銅器の使用が特徴的で、この技術革新により、それまでに入手可能な金属よりも強く耐久性のある材料が生まれ、これらの社会は武器、道具作り、工学、芸術において大きな優位性を獲得した。
この技術革新は、より大きな都市中心部の発展、複雑な社会の確立、そして都市の建設の基礎を築いた。楔形文字をはじめさまざまな文字体系が発明され文化の基盤を固めた。
しかしこの繁栄したネットワークは紀元前12世紀に突然崩壊したのだ。
アメリカの考古学者、エリック・クライン氏は、紀元前1177年が状況が著しく悪化した決定的な瞬間であると主張している。この年の前後数十年の間に、各地で反乱が起こり、戦争が勃発し、都市が崩壊し、文字体系が消滅し、文化が地球上から消滅したのである。
しかしどうしてこの時期に各地の文明が同時に滅びたのか。現在有力な仮説には以下のようなものがある。
●「海の民」の到来
中世のバイキングのような略奪的な征服者集団である「海の民」については文字記録がないためその正体はまったく不明であるが、その存在は今も広く議論されている。おそらく彼らは特定の文化集団ではなく、地中海のほかの地域から来た海洋民族すべてに適用される包括的な用語だったとも考えられる。
正体が何であれ、彼らの到来は、紀元前13世紀から12世紀の間にアナトリア、シリア、フェニキア、カナン、キプロス、エジプトの広範囲にわたる都市の放棄を説明するかもしれない。
●社会統治システムの腐敗
一部の文明が全体的なシステムの崩壊によって内部から腐敗した可能性もある。学者たちは、多くの後期青銅器社会が「致命的な中央集権化、複雑化、独裁」的な政治構造を持っていたため、不平等や搾取に弱く、社会的不安定につながったと指摘している。
●気候変動
2013年の研究では、古代の湖の堆積物から花粉粒子が調べることでこの頃の気候変化の証拠は発見された。この環境変化が広範囲にわたる干ばつ、食糧不足、飢饉をもたらしたと研究者らは主張している。その結果、大規模な移住、社会の混乱が起こり、かつて強大だったこれらの文明は、おそらく「海の民」のような侵略者に対してきわめて脆弱な状態に置かれた可能性がある。
●パンデミック
紀元前3千年紀末にクレタ島でペストが発生したことが研究で明らかにされているが、ほかの地域と社会に影響を与えたことを示す証拠は限られている。
クライン氏は青銅器時代の崩壊は単一の要因で説明できる可能性は低く、複数の要因が同時に起きた「災難のパーフェクトストーム」だったと提唱している。
この悲劇のストーリーはどんなに強力で進歩した文明でも、崩壊を免れることはできないことを謙虚に思い出させてくれるケースでもある。青銅器時代の偉大な文明が発展の上昇気流に乗っていたとき、その壮大な都市や壮大な理念がやがて忘れ去られることを予見できた者はほとんどいなかったはずだ。しかし、気候変動、内部紛争、技術的変化がうまく組み合わさると、高度な文明社会でさえ簡単に衰退し、崩壊する可能性があるのだ。現在の激動の世界情勢に生きる我々において他山の石ではないことは間違いない。
文=仲田しんじ
提供元・TOCANA
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