ローマ・カトリック教会の総本山バチカン教皇庁は今、苦しい立場に陥っている。カトリック教会の不祥事といえば、聖職者の未成年者への性的虐待事件が直ぐに思い浮かぶが、平信者からの献金の不正な利用、横領も教会の罪状のカテゴリーに入ることを今回、バチカン法廷が認めたからだ。

ベッチウ枢機卿(バチカンニュース、2020年9月24日)

バチカン裁判所のジョゼッベ・ビ二ャトーネ判事は16日、2013~14年にかけ不動産投資などに絡み横領の罪に問われた枢機卿アンジェロ・ベッチウ被告(75)に対し、禁錮5年6月(求刑禁錮7年3月)と、無期限の公職追放と罰金8000ユーロも言い渡した。ファビオ・ヴィリオーネ弁護士によると、被告は無罪を主張し、上訴する方針だ。

枢機卿といえば、通称「ペテロの後継者」と呼ばれているローマ教皇の次に位置する高位聖職者だ。世界で13億人の信者を抱えるカトリック教会で枢機卿は現在200人を超えるが、次期教皇の選挙権を有し、コンクラーベに参加できる80歳未満の枢機卿は137人だ。ベッチウ枢機卿はその1人だったのだ。

それだけではない。フランシスコ教皇が2018年6月に枢機卿に任命した聖職者であり、「教皇が最も信頼する枢機卿」の1人と受け取られ、バチカン列聖省長官を務めてきた人物だ。その枢機卿がバチカンの裁判所のベンチに座り、有罪判決を受けたというのだから、バチカンが窮地に陥るのは当然だろう。