マイナス20度、停電、空腹の状況下に生きている人々がどんなに大変かは体験しないと理解できないだろう。ロシア軍と戦うウクライナ兵士は更に大変だ。生命の危機を常に感じながら、戦場でロシア軍兵士と闘っている。冬になれば、通常の戦闘は難しくなるから、無人機攻撃やミサイル攻撃が中心となってくる。兵力の増強を決定したロシア軍は戦時経済体制のもと武器を依然十分保有しているから、欧米諸国からの武器供与に依存するウクライナ軍はやはり不利だ。

ウクライナ軍によると、ウクライナ軍とロシア軍の間の戦闘はここにきてウクライナ東部に集中している。アヴディウカ戦線では、過去24時間に20回のロシア軍の攻撃が撃退された。ウクライナ軍参謀本部の最前線報告によると、ロシア軍はバフムートを15回攻撃した。ウクライナ南部ヘルソン地域では、ウクライナ軍がドニプロ川南岸の新たな陣地を維持しているという。

ウクライナ戦争は来年2月24日でまる2年目を迎える。ウクライナ国民の祖国への愛国心、防衛の決意は途絶えていないが、2022年上半期のような高まりはないだろう。犠牲者も増えれば当然のことだ。この冬を何とかして乗り越えなければならない。ゼレンスキー大統領はどのような思いを持ちながら、国の指揮をとっているのだろうか。同大統領は11月30日、AP通信とのインタビューの中で「期待した成果は実現していない」と、現状が厳しいことを認めている。

欧米諸国はウクライナ支援の継続と連帯を繰り返し表明しているが、欧州諸国(EU)の27カ国でも対ウクライナ支援で違いが出てきている。スロバキア、ハンガリーはウクライナへの武器支援を拒否し、オランダでも極右政党「自由党」が11月22日に実施された選挙で第一党となったばかりだ。もはや前政権と同様の支援は期待できない。欧州の盟主ドイツは国民経済がリセッション(景気後退)に陥り、財政危機に直面している。対ウクライナ支援でも変更を余儀なくされるかもしれない。最大の支援国・米国では連邦議会の動向が厳しい。共和党議員の中にはウクライナ支援のカットを要求する声も聞かれる、といった具合だ。もちろん、イスラエルとハマスの戦闘は米議会の関心を中東に傾斜させているため、ウクライナへの関心は相対的に薄くなりつつあることは事実だ。

ウクライナ国民は今、内外共に厳しい時を迎えている。ウィーンで空から静かに落ちてくる白い雪を見つめていると、キーウ市民はどのような思いで今、雪を眺めているだろうか、と考えざるを得なかった。

編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2023年12月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。

提供元・アゴラ 言論プラットフォーム

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