まず、無駄な歳出削減については、「大規模な補正予算を講じてきたコロナ禍への対応が一段落した以上、歳出構造を平時に戻していく方針は堅持していきます。今回の経済対策策定に当たっても、合わせて5兆円となる予備費を半減し、財源として活用いたします。年末までの予算編成過程で、さらなる歳出構造の平時化を検討してまいります」と仰っている。
「今まさにデフレ脱却ができるかどうかの瀬戸際だからこそ、あらゆる政策を総動員し、国民の可処分所得を拡大する」と、可処分所得向上に関する意志は明確だ。
消費拡大、企業の業績向上、官民投資、税収増についても「家計の購買力が上がることで消費が増え、その結果、物の値段が適度に上がる。それが企業の売り上げ、業績に繋がり新たな投資を呼び込み、企業が次の成長段階に入る。その結果、また賃金が上がる」「経済が成長してこそ税収も増え、そして財政健全化にも繋がっていきます」と循環式に説明している。
全ての要素が論理的に「好循環型経済」に帰結する内容になっており、それはつまり掲げられたビジョンに軸が通っていることの証明であって、つまりは本質的なビジョンであると言えよう。先述したように、それぞれの経済施策が、成果目標も曖昧な中でバラバラに動いていては大きな成果が出るはずもない。全てが帰結する軸が必要であり、それがまさに好循環の軸になり得るのだ。
以上、筆者がなぜ岸田総理が示された総合経済対策に大賛成なのか、その理由を述べてきた。
しかし、皆さんもご承知のように、重要なのはここからだと言えよう。ビジョンは掲げられたが、それを達成するための施策は全てがこれからだ。まずは所得向上のきっかけとなる給付と所得減税が実行されなければならないし、それは効果が出る規模感でなくてはならない。
また、前回の寄稿でも述べたが、所得減税は一過性のものであってはならず、ある程度恒久的なものが続く必要がある。それを実現させるだけでも、これからいくつもの壁を突破していかねばならない。
国富の海外流出や無駄な歳出を抑制するためには、ビジョンに照らし合わせながら、有益な施策なのかそうでないのか、絶えずチェック機能を果たしていかねばらならない。好循環型経済に資する施策にのみ、資源を投下させていくことが肝要である。
そのためには、国家経済戦略を策定し、注力していく産業分野をある程度明確化していく必要もあるだろう。今回掲げられたビジョンと相容れない施策については、いま既に進行しているその類のものも含めて、強い決意を持って中止していきたいところだ。
長く続いたデフレからの完全脱却は、「明日は今日より良くなる日本」を実現していくための最大の課題です。政府、経済界、労働界をはじめ、国民全体でこれに取り組むことが必要です。政府は先頭に立って全力を尽くします。国民の皆さんのご協力を引き続きお願い申し上げます。
と、総理は会見の最後に述べられた。好循環型経済の実現に向けて、一人の国民として微力ながらも出来得ることを今後もやっていきたい。
提供元・アゴラ 言論プラットフォーム
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