ボッシュは2024年6月19日、「テックデー2024」をドイツで開催し、最新の技術を発表した。
ボッシュは現在、ソフトウエア開発、デジタル・サービスを事業の柱としており、特に今後はソフトウエア・ディファインド・ビークル(SDV)に関するソフトウエアとエレクトロニクスの市場規模は2030年までに4620億ドル(約7兆4000億円)に達すると予測されている。また2023年以降、車両のソフトウエアが占める割合は3倍になると見込まれている。
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ソフトウエア分野とハードウエアであるエレクトロニクスシステム製品を得意とするボッシュにとっては追い風が吹いている状況だ。こうした背景のもとで、クアルコム社と共同で強力な車載ドメイン・コンピューターも開発した。この次世代コンピューターには、インフォテイメントと運転支援システムの制御が統合されているのだ。
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この新世代の車載コンピューターを搭載することで、クルマはECU関連パーツの設置スペースの縮小、電装ケーブル数の低減などの重量削減のみならず、コスト削減も可能になる。
そして、新たなソフトウエア技術として、ハードウエアに依存せずソフトウエアで車両のあらゆる動きを制御する「ビークルモーションマネジメント」と、ブレーキ・バイ・ワイヤーをベースとする「eBrake to zero」を発表した。
「ビークルモーションマネジメント」はクロスドメイン・ソフトウェアシステムだ。ブレーキ、ステアリング、パワートレイン、サスペンションなどのアクチュエーターをコントロールすることで、6軸(前後・左右・上下軸)のすべての車両の動きを制御することができる。
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ハードウェアに依存しないソフトウェア機能により、車両のダイナミクス、ハンドリング、効率性が最適化されるわけだ。さらに、ビークルモーションマネジメントは、中央車両コンピューター上のシステム統合ソフトウェアで、さまざまな車両領域にある、あらゆるアクチュエーターを統合制御するため、複雑な車両アーキテクチャが管理しやすくなる。またビークルモーションマネジメントには、安全性と利便性を高めるクラウド上のデータベースのサービスも取り込むことができる。
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ビークルモーションマネジメントのクラウドベース、そしてデータベースのサービス製品には「路面認識」サービスが含まれる。 このサービスは車両のセンサーデータを使用して、道路の状態と路面摩擦係数に関する情報を生成。このセンサーデータは、他の車両からの情報や気象情報サービスからのデータとクラウドで統合され、ハイドロプレーニング現象、路面の凍結、道路の穴、道路上の突起などの危険をドライバーに事前警告することができる。
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これらのデータベースやクラウドベースのサービスは、たとえばカーブ時のビークルダイナミクスや、安全および支援システムの走行モードなどを自動的に調整するためにも使用でき、その結果として安全性が向上し、運転がより快適になる。
「eBrake to zero」もソフトウエアであり、その機能は、車両が停止した直後に発生する不快なショックを防止することができる。これにより、車両の同乗者にとっては、市街地走行における停止時の快適さの向上、乗り物酔いの防止や、停止時の車両ノイズの大幅な改善が実現する。
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電気自動車の駆動モーターとブレーキシステムを適切に制御することで、油圧ブレーキを介入させることなく、電気モーターが車両をスムーズに停止させ、油圧ブレーキが必要な場合でも、同乗者はモーターブレーキから油圧ブレーキへの移行に気づくことなく、しかも車体の動きを抑えて作動することができる。
またビークルモーションマネジメントを支えるアクトバイワイヤー技術も発表された。アクトバイワイヤー技術は、ステアリング、ブレーキのシステムのそれぞれのアクチュエーターがペダルやステアリングホイールとの機械的な接続ではなく電気信号に置き換えるバイワイヤー技術だ。
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このシステムにより、危険な運転状況をサポートするだけではなく、危険な状態から回避させることも可能となる。またこれにより快適性と車両の俊敏性も向上させることができる。
アクトバイワイヤー技術により、ブレーキとステアリングのアクチュエーターの標準化が進み、衝突時の安全性が高い場所への搭載が可能となり、取り付けスペースも縮小するなど、車両レイアウトの新たな可能性が拡大する。また、車両のノイズや振動挙動も改善される。
ブレーキペダルは、従来のペダルストロークを短縮、または完全になくすなど、新しい運転感覚を生み出すことが可能になる。またこの技術により、従来の左ハンドル車用と右ハンドル車用といった、部品の使用数を削減できる。
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もちろんアクトバイワイヤー技術は、安全上の理由からブレーキ、ステアリングアクチュエーター、電源供給、通信の設計には冗長性を加味し、バックアップシステムが採用されている。
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