石破茂です。

北朝鮮による衛星打ち上げが成功

21日夜、北朝鮮が衛星を軌道に乗せることに成功したことにより、我が国周辺の安全保障環境はさらに悪化することとなりました。独自の衛星打ち上げ技術を保有する国としては11か国目となり、決して等閑視すべきものではありません。

私はテレビをあまり視ないのですが、21日夜のNHK第一放送はJアラートの内容である「北朝鮮からミサイルが発射されました。沖縄県の方は地下か建物の中に避難してください」というメッセージを繰り返して流していましたが、発射されたのは弾道ミサイルではなく衛星を搭載したロケットであったはずで、このメッセージの内容には強い違和感を覚えました。

今年7月、火星18の打ち上げを視察する金正恩朝鮮労働党総書記 北朝鮮HPより

翌日には「弾道ミサイルの技術を用いた衛星の打ち上げ」と表現振りが変わりましたが、ここを混同すれば、日本に対する脅威の本質を国民が誤解することになってしまいますし、本当にミサイルが撃たれた時に国民が「慣れっこ」になってしまい、対応が遅れることにもなりかねません。「弾道ミサイルであれ衛星であれ、国連安保理決議違反なのだから同じことだ」というのは随分と乱暴な見解だと思います。

発射された飛翔体がミサイルであった場合、初速や打ち上げ角度などから、それがどこにいつ着弾するのかを正確に割り出すことが可能なはずで、そうでなければミサイル防衛システム自体が機能しません。ミサイルなのかロケットなのかわからない、などといういい加減なシステムではないはずです。この点はずっと指摘し続けているのですが、一向に改められないことが不可解でなりません。

わが国がそうであるように、たとえ偵察衛星の打ち上げに成功しても、地上の情報を正確に撮影し、分析できるようになるには長大な時間を要します。高度にもよりますが、衛星が地球を回るのに数時間を要しますので、出来るだけリアルタイムに近く撮影するには複数機を打ち上げなくてはなりませんし、撮影した画像を分析するにも高度の熟練した技術を必要とします。