Phira Phonruewiangphing/iStock

日本人の3人に1人は「痔」だと言われています。「温水洗浄便座」で洗うようになったという人も少なくありません。しかし、洗うとかえって、痔が悪化する可能性があるようです。

今回は、近著に「便秘の8割はおしりで事件が起きている!」がある女性肛門科医の佐々木みのりさんに「オシリの真実」について聞きました。

「便秘の8割はおしりで事件が起きている!」(佐々木みのり著)日東書院本社

肛門科を受診しないと悲劇が

佐々木さんの診療所には日本各地、海外からの患者さんも多いそうです。しかし、肛門科を訪ねるのは勇気がいります。すでに、楽観的な状況ではないケースも少なくないようです。

「65歳の女性が1人で来院されました。長年勤めた会社を定年退職したので時間もできたし、人生の区切りとして、思い切って勇気を出して、肛門科を受診しようと思って来たと問診票に書いてありました。出産後、30代くらいから痔があったようですが、恥ずかしくて誰にも相談できなかったようです」(佐々木さん)

「通販で買える痔の薬を家族にも内緒で取り寄せて使い続けていました。幸い、痛みもなく、時々出血するものの大した量ではなく、大丈夫だろうと病院に行きませんでした。新聞広告でも『痔は薬で治せる』と書いてあったし、電話相談でも『使い続けたら治る』と言われていたので、迷うことなく使ってきましたとのことです」

ところが、症状は改善せず、ようやく今日、来院することができたのです。検査の結果はどうだったのでしょうか。

「彼女のいぼは痔によるものではなく、がんである可能性が高いことが分かりました。当然、細胞の検査をしてみないと確定診断にはならないのですが、痔とがんの区別はすぐにできます。私は彼女にがんが疑われること、しかも、ほぼ間違いないと確信していること、大きな病院を紹介するから、一刻も早く受診してほしいことを伝えました」(佐々木さん)

「実はこのようなケースは少なくありません。きっと、私が経験していることは氷山の一角でたくさんあることでしょう。不安が少しでもあるのなら、一度、肛門科を受診して、自分のカラダに起きていることが何かを確かめてください」(同)