現代の音楽シーンでヒット曲となる要因のひとつには、TikTokやInstagram、YouTubeといったSNSでバズる(話題になる)ことが挙げられる。実際に、2024年もSNSでのバズりから数多くのヒット曲が生まれている。
ビルボードJAPANが発表した2024年上半期の総合ヒット曲チャート(2023年11月27日~2024年5月26日データ)を見ると1位Creepy Nuts『Bling-Bang-Bang-Born』、2位tuki.『晩餐歌』、3位YOASOBI『アイドル』、4位Ado『唄』、5位Mrs. GREEN APPLE『ケセラセラ』となっている。5位以外はすべてSNSでのバズりがヒットにつながっている。これらの曲がどのようにSNSでバズったか、紙幅の関係でその流れは本文末のQRコードのリンク記事で解説する。
これまでのヒット曲は、楽曲自体がいいことは大前提として、テレビ番組やドラマの主題歌になる、CMのテーマ曲になって話題を集め、いろいろな場面で聴かれるケースが多かった。しかし現在は、テレビを視聴する若年層が激減。60歳代以上を除くと、観て楽しむエンターテインメントの中心はTikTokやInstagram、YouTubeなどのSNSが大きく台頭している。そう、いまやヒット曲はSNS発の時代なのだ。
TikTokやInstagramで話題となり、そこから始まる大バズり!
SNSではどのような流れでバズっていくのだろうか。その仕組みを簡単に解説しよう。スタートはTikTokからが多い。TikTokで流される動画コンテンツは数十秒程度と短いのが特徴。手軽に短時間でいくつもの動画が楽しめるのが人気。まずはここで重用されることで、結果として話題の曲になっていく。話題になれば、AIのレコメンド機能で、瞬く間にその曲は拡散される。そこで興味を持った人がよりその曲を長く聴きたいと思い、InstagramやYouTubeに飛び大きなうねりとなる。さらにYouTubeではその曲を考察した動画が多数生まれ、バズりは本格的になり、メディアなどで取り上げられ、大ヒットとなるのだ。 どんな曲がTikTokで話題になりやすいのか。そのポイントは“踊ってみた”や“曲に合わせてポーズ”動画に使用されることだ。キャッチーで振り付けやポーズがユニークかつ簡単なもの、さらに同じ言葉を連呼する曲が採用されやすい。
この要素をすべて備えた代表曲が、Creepy Nutsが2024年1月にリリースした「Bling-Bang-Bang-Born」だ。TVアニメ『マッシュル-MASHLE- 神覚者候補選抜試験編』オープニング曲で、アニメのオープニングシーンで登場人物たちが両手をそろえ、足の動きと連動しながら左右に振るダンス『BBBBダンス』がユニークで真似がしやすく、さらに『Bling-Bang-Bang-Born』と繰り返すサビのフレーズは同じような言葉の連呼で耳に残る。このフレーズは英語のため、日本だけでなく、海外発の“踊ってみた”でも使用され、世界的なバズりとなり、ストリーミングで2024年リリースの曲では、最速で5億回を突破する大ヒットになっている。
TikTokでは、アーティストが有名でなくてもバズるケースが多い。上半期の総合ヒット曲チャート2位のtuki.。デビュー曲となる『晩餐歌』は、個人で制作過程を少しずつ投稿し、「オリジナル曲の1番です」「オリジナルのCメロです」と新しい動画を公開するたびに楽曲のよさと歌唱力が評判になり、大きな注目を集め、デビュー曲が大ヒットになった。
千葉雄喜、KOMOREBIなど フレーズ重視のヒップホップ系がバズりやすい
2024年、他には乃紫が1月にリリースした『全方向美女』のフレーズの「正面から見ても、横から見ても、下から見てもいい女」に合わせてのポーズがキュートでかつ動画撮影がしやすいと話題になり、TWICEやNiziUのメンバーの投稿もあって大バズりし、TikTok内で総再生回数が19億回を突破。また「ねえねえ」のフレーズとかわいらしさを強調したダンスのFRUITS ZIPPERの『私の一番かわいいところ』がTikTok内で総再生回数が8億回を突破した。
フレーズ重視のヒップホップ系がバズりやすく、「ギリハッピー」のフレーズとピースポーズのダンスが話題のKOMOREBIの『Giri Giri』。「チーム友達」のフレーズとBBOY系のパフォーマンスがクールな千葉雄喜の『チーム友達』、千葉は「お金稼ぐ私はスター」のフレーズが、世界的にバズっているミーガン・ジー・スタリオンと共演の『MAMUSHI feat. YUKI CHIBA』。などが2024年、TikTokで大バズりしている。
現代のアーティストたちにとって、いい作品を作るのはもちろんだが、いかにSNSでバズるかがどうかも、ヒット曲を生み出すために必要な大きなチャレンジになっている。